フレックス勤務が広まりにくい理由は何か

マネジメントの専門家たちは、9時から5時までという標準的な勤務時間が崩壊することを、ずいぶん前から予測していた。インターネットとモバイル技術のおかげで、いまや好きな場所で好きなときに働ける時代になったと彼らは主張する。

確かにそのとおりかもしれない。しかし、では、多くの人がいまなお会社の机にへばりつき、9時から5時までという従来どおりの勤務時間もしくは、その延長バージョンにしがみついているのはなぜなのか。

理由は会社の規定である。フレキシブルな勤務形態はかつてより広まってはいるが、それを公式の規定や制度にしている企業はほとんどない。標準とは異なる勤務スケジュールの社員を積極的に受け入れるマネジャーやそうした社員を使いこなす用意のあるマネジャーとなると、さらに少ない。だが、これは柔軟な働き方という考えを捨て去るべきだということではない。自分にとっても上司にとっても会社にとってもうまくいくプランを提案する責任は、自分自身にあるということなのだ。

柔軟な勤務形態を認めてもらおうと思うなら、その前に、自分は長年守られてきた慣行を破ろうとしているのだということを認識する必要がある。

「マネジャーは昔から部下を遠隔就業させることに消極的だった。それは信頼が足りないためで、その部下が仕事をしているのか友人とお茶を飲んでいるだけなのか確認できないからだ」

こう指摘するのは、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの経営学教授で、同校のリーダーシップ・プログラムおよびワーク・ライフ統合プロジェクトの創立ディレクター、スチュワート・D・フリードマンだ。部下を信頼している上司でも、一部の部下をえこひいきしていると思われるのではないかとか、生産性が下がるのではないかといった不安を感じてしまう。

その一方で、標準とは異なる勤務形態の利点を理解するマネジャーや組織が増えているのも事実である。MITスローン・スクール・オブ・マネジメントの経営学教授で『Beyond Work-Family Balance: Advancing Gender Equity and Workplace Performance』の共著者としても知られるロッテ・ベイリンの調査では、勤務時間について、自分が必要とする柔軟性を許された社員は、目標をよりたやすく達成し、欠勤や遅刻の回数が減り、士気が高まることが明らかになっている。

自分の希望を上司に伝える際、これらの利点に焦点を当てれば、標準とは異なる勤務形態を承認してもらえる可能性が大きく高まるはずだ。