12月14日、オリンパスが過去の決算を訂正した有価証券報告書と2012年3月期の第2四半期報告書を関東財務局に提出した。報告書の訂正は07年3月期までさかのぼって行われ、東京証券取引所は有価証券報告書に虚偽の情報を載せてきたことが上場廃止基準に抵触するかどうか、本格的な審査を始めた。1~2カ月後には結果が示される予定だが、何よりも株主にとって痛手となったのは、訂正で自分たちの財産の持ち分である純資産が大幅に目減りしたことだろう。

07年3月期の純資産だけ見ても、訂正前の3448億7100万円から2249億5100万円へ1199億2000万円もの減額を余儀なくされている。30.6%だった自己資本比率も21.4%へ大幅な下方修正となった。直近の12年3月期の第2四半期の自己資本比率に至っては4.5%しかなく、優良企業としてもてはやされていた頃の面影はまったく感じられない。

オリンパスは財テクの失敗によって発生した損失を隠すため、1998年から受け皿となるファンドを設立し、損を抱えた金融商品をそこへ“飛ばし”ていた。今回、そのファンドを子会社として連結決算に組み込んだことで、実態を示した財務の数字が表に出てきたわけだが、公認会計士である私は一連の動きを見ていて、決算をチェックする監査法人の責任の重さを改めて痛感している。

オリンパスの監査人は09年3月期まであずさ監査法人が、翌期からは新日本監査法人が務めてきた。今回の問題を調査した第三者委員会は報告書のなかで、あずさ監査法人について「09年3月期の監査において、オリンパスの会計処理につき大きな意見対立があったにもかかわらず無限定適正意見を付したことが問題として指摘しうる」と批判している。

損失解消のための国内3社の株取得とジャイラス買収に関するファイナンシャル・アドバイザーへの報酬が、あまりにも高額なことで問題となっていたのだが、外部専門家による報告書を受けて同社の監査役会が問題なしと結論づけたことから、あずさ監査法人はそれ以上踏み込まずに無限定適正意見を出してしまった。

私見だが、「外部専門家による報告書」は意外に曲者だと思う。調査報告のなかでは、監査法人なりに職分の範囲で努力した部分も見られるが、他方で営利を目的とする企業でもある。可能なら不要な混乱やもめ事は避けたいだろう。そこで「この数字はおかしい」と思っていても、監査先から「問題なし」という外部専門家の報告書を出されると、「無限定適正意見を出す担保」を得たように感じ、検証が甘くなる可能性がないとはいえない。