もう一度「らしさ」を取り戻せば勝てる!

<strong>日本マクドナルドHD会長兼社長兼CEO 原田泳幸</strong>●1948年、長崎県生まれ。県立佐世保南高校卒。東海大学工学部卒業。日本NCR、横河ヒューレット・パッカードなどを経て、97年、アップルコンピュータジャパン社長就任。米本社副社長兼務。2004年3月、日本マクドナルドHD副会長兼CEO就任。05年3月より現職。
日本マクドナルドHD会長兼社長兼CEO 原田泳幸氏

組織が危機に瀕したとき、高所からああすべき、こうすべきと正論を吐くだけではリーダーは務まりません。必要なのは論理ではなく、危機を乗り切る具体的な施策であり、それを実現するためには自ら身を削ることも辞さない覚悟と決意です。

2004年に私がCEOに就任したとき、マクドナルドは、既存店売上高が7年連続対前年比マイナスと、まさに最悪といっていい状況でした。景気後退や世の中の健康志向が低迷の理由なのだから、誰が舵取りをしても劇的な業績の改善は難しい。巷ではそういう見方が多勢を占め、しかもその空気は社内にも蔓延していました。

しかし、私は経営者です。しかも、変革を期待されて就任したのですから、そんな評論家のようなことをいっているわけにはいきません。

それに、業績悪化の真の原因は、外部ではなく内部にあることが私にはわかっていました。要するに、外的要因に対処することに四苦八苦している間に、肝心のマクドナルド「らしさ」を見失ってしまっていたのです。

世の中の成功している企業を見てください。例外なく自分たちが提供できる独自の価値=「らしさ」とは何かを正確に把握し、そこに経営資源を集中して強みにしています。

たとえば、私の古巣でもあるアップル。ウィンドウズ95と同じ土俵で戦おうとしていた当時は最悪の経営状態でしたが、復帰したスティーブ・ジョブズがアップルらしさを前面に打ち立てる戦略に回帰すると、見事にV字回復を果たしたではありませんか。

だから、私はまずマクドナルドらしさを取り戻すために、「クオリティー・サービス・クレンリネス(QSC)」という創業当初からの企業理念を徹底することから始めました。ただし、それは単純にスタート地点に戻るということではありません。「Back to the basic with innovative manner」。つまり、これまでとは違う新しいやり方で、もう一度マクドナルドの基本を再構築するという意味です。