花王 商品開発 呉裕利子●1960年、東京生まれ。東京薬科大学修士課程修了後、花王入社。東京研究所、アジア、国内ヘアケアの商品開発を経て、衣料用液体洗剤の開発を担当。

2009年8月、花王はすすぎ1回でOKという画期的な液体洗剤「アタックNeo」を発売した。一カ月で1000万本を出荷、年間200億の売り上げを見込む大ヒット商品である。その商品開発を担当したのが、呉裕利子さん(49歳)だ。

商品コンセプトの発案は06年。コンパクト化を軸に節水・節電・時短を可能とする、消費者はもとより店舗も花王も、誰もが喜ぶ商品を目指した。

「テーマクリエーションは、長期的に取り組む仕事で、私の仕事の大きな柱の一つ。四六時中、次のテーマを探しています」

当初、呉さんが持ちかけたコンセプトは技術や時間的な制約の中で、何度も開発を断られた。それでも開発の意義を確信し、粘り強く打診を続けるうちに一人の研究所員が「難しいけれどできますよ」と後押しの声を上げてくれた。そこから試作品が生まれ、モニターによる高評価の手応えを得て、プロジェクトはようやくスタートした。

呉さんのもう一つの役割は、プロジェクトを「発売」というゴールへと導くことだ。その過程で、品質、容器の形状など、様々な面で多くの手が必要になる。このプロジェクトでも関連部門は25に上った。呉さんは、その全部門の動きが一目でわかるスケジュール表をつくる。縦軸に各部門、横軸に時間の経過を描いた緻密なマトリックスである。これをスムーズに運用するにはコツが要る。

「非常事態に備え、スケジュールに少しずつバッファを設けています。また、担当者の経験値や仕事の進め方によって締め切り日のサバを読むなど、依頼の仕方も工夫します。仕事の速さや完成度の高さなど、担当者ごとに違う傾向は、幾度かやりとりすれば予想がつきます」

呉さんの一日は、大半が会議で終始する。メールや電話で用を済ませていては、「連帯感」が生まれないからだ。

携帯電話はプライベート用と会社用を使い分ける。ストラップは猫の飾り。

「アタックNeoの開発は、数あるプロジェクトの一つにすぎません。ほかに多くの仕事を抱える各担当者に、いかにこの仕事のプライオリティを上げてもらうか。それが、進捗スピードや仕事の質につながります。そのためには、会って熱意を共有することが大切なんです」

会議では結論を持ち越さず、必ず何らかの結果を出す。次の会議の日程も会議中に決定する。これらを実現するために各部門の「キーマン」を見極め、会議への参加を呼びかける。

今できることは後回しにしないことも鉄則にしている。小さな処理でも自分が保留すれば、先の進行が滞ってしまう。「空き時間は、メールをチェックし、必要な処理はその場で片付けるようにしています」

こうした数々の配慮が全体の効率を高め、プロジェクトを成功へと導いている。

※すべて雑誌掲載当時

(永井 浩=撮影)