米アップル社製のスマートフォン「iPhone4S」が発売された。これまでiPhoneを独占販売してきたソフトバンクが、KDDIの参入により苦戦を強いられることは必至だ。

KDDIからソフトバンクへのMNP(番号ポータビリティー制度)を利用した乗り換えは、ソフトバンクからKDDIへの乗り換えを差し引き、ここ半年では月平均1万5000件程度。今後、ソフトバンクからKDDIへの流れが若干上回ると予想する。

理由は、ソフトバンクのネットワーク品質の悪さだ。「つながりやすさ」の改善が喫緊の課題となる。同社は乗り換え防止策として、iPhone3Gおよび3GSからiPhone4Sへの機種変更者に対し、一律6000円をキャッシュバックする。だが、効果は限定的だろう。

同社の携帯電話販売台数の4割をiPhoneが占めるといわれる。秋冬モデルではAndroid端末を9機種投入し、“一本足打法”からの脱却を急ぐ。

一方、KDDIにとっては契約者純増数アップの起爆剤となろう。だが、コストアップは避けられない状況だ。

現在、同社が販売代理店に支払うインセンティブ(報奨金)の平均が2万4000円であるのに対し、ソフトバンクの平均は3万9000円。iPhone4Sの投入で、ソフトバンク並みに上昇した場合、仮に300万台売れれば、450億円のコストアップだ。これは前期の営業利益の約10%にあたる水準である。

王者NTTドコモは、両社の戦いを静観する。iPhone参入には慎重な構えだ。

アップルが携帯電話会社に要求する契約条件は、非常に厳しいといわれてきた。だが現在、出荷台数でAndroidがiPhoneを上回り、その差は広がっている。創業者スティーブ・ジョブズを失った同社は今後、条件を緩めざるをえなくなるだろう。

iPhoneの次世代機は、LTE(次世代高速無線通信規格)に対応するという予測もある。LTEをいち早く商用化しているNTTドコモが、早ければ2012年、iPhoneの次世代機を引っさげて参入することも十分にありうる。

10月以降の契約者純増数は、1位ソフトバンク、2位ドコモ、3位KDDIという現在の情勢から2位と3位が入れ替わることは明白だ。場合によっては、1位KDDIというのも視野に入る。

※すべて雑誌掲載当時