更新料無効判決はかなり特殊なケース

弁護士 亀井英樹●ことぶき法律事務所所長。1985年中央大学法学部卒。92年司法試験合格。95年東京弁護士会登録。

更新料がこれから一律に無効になることはないと私は考えています。裁判所が無効と判断したのはかなり特殊なケース。過去の判例をみても、妥当な金額であれば合法だと結論づけられています。

賃貸住宅の契約を巡っては、消費者意識の高まりを背景に、この数年、従来の商慣行をあらためる流れが強まっています。象徴的な事例は東京都が敷金や修繕負担金のトラブルを解決するため2004年に施行した「賃貸住宅紛争防止条例」です。更新料を巡る裁判もこの流れにあるといえます。

一連の裁判では、「更新料の支払い特約」について消費者契約法10条に照らして有効か無効かが争われています。同法の施行は01年。いま判決が相次いでいるのは、消費者契約法10条が消費者にとって強力な法律であることが、いくつもの判例を経て徐々に明らかになったからです。

消費者契約法10条は、民法の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する契約は無効と定めています。これは消費者が関わるあらゆる契約に適用できる法律です。「基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するかどうか」は司法判断となりますが、世論を背景に消費者に有利な判決が下されることも少なからずあります。

裁判所の判断基準は以下の3つに大別できます。売り手と買い手の「情報の量と質」、双方の「交渉力」、そして「暴利性」です。多くの場合、情報や交渉力おい買い手である消費者は不利な状況にあります。そうした弱みにつけ込んで、「一方的に消費者の利益を害しているどうか」が判断の基準になるわけです。