製品を販売した後に収益を上げるバンドリング戦略。ジェットエンジンや携帯電話など、多くの成功事例から競争優位を築く秘訣を解き明かす。

パソコンが苦戦しプリンター好調な理由

パソコンでは日本メーカーは苦戦している。しかし、周辺機器であるプリンターでは、キヤノン、セイコーエプソン、リコー、ブラザー工業などの日本勢が好調である。

デジタル技術だけでなく、多くのエンジニアの知恵と熟練を動員して、機械・材料系のアナログ技術を使いこなして品質向上を図るという日本の得意芸が生かせるからであろう。だが、それだけではない。機器販売後のサービス事業がうまく収益化できているからである。

このような戦略をバンドリング戦略と呼ぶ。流通段階での価格競争が激化しているために、機器販売だけで利益を上げることは難しくなっている。機器の購入後は顧客の指名買いが行われる消耗品販売では、価格競争の泥沼から抜け出ることができるのである。われわれの周囲を注意深く眺めてみると、上手なバンドリング戦略で収益を上げている企業が増えていることに気付く。

バンドリングとは束ねるという意味だが、複数の事業活動をうまく束ねることによって競争優位を築きあげようとする戦略がバンドリング戦略である。この戦略は、機器販売とその後のサービスのいずれを収益源とするかによって、2つのパターンにわけることができる。

第1は、プリンターのように、販売後のサービス活動で収益を上げるというパターンである。消耗品・部品の継続的な購入が必要な商品の場合、このパターンをとりやすい。機器の販売で顧客を囲い込むことによって、消耗品の販売で収益を上げることができる。機器をつくったメーカーしか提供できないサービスには一種の独占状態がつくられる。そこで競争を排除できるから高い収益を上げることができるのだ。先に挙げたプリンターもそうであろう。極端な場合は、機器の販売では赤字であっても、販売後のサービスで収益を上げることによって、全体として収益化を図ることができる。

販売後のサービス事業で収益を上げている典型例は、ジェットエンジンである。故障が起こる前に高温部品を取り替えることによって、航空会社は、機材の有効利用を図ることができる。GEがこの戦略を創造した。競争相手のロールスロイスもこのパターンを確立することによって、事業の収益化に成功した。

エレベーターも、機械の販売時点では利益を出すのは難しい。しかし、販売後の保守点検で利益を上げることができる。三菱電機や日立製作所では、このサービス部門が高収益部門となっている。しかし、このサービス価格があまりにも高い場合には、顧客もサービスコストを下げるために、もっと安くこのサービスを提供する業者を育てるであろう。