『海の都の物語』塩野七生著 新潮文庫、全6冊

30年前、MBA留学でのシンガポール滞在時、新聞広告で本書を知り、一気に読んだ。「海の都」ヴェネツィアは、7世紀末から18世紀末まで、約1100年にわたり続いた共和国だ。小さな海洋国家が、歴史上で最も長い繁栄を謳歌できたのはなぜか。理由の一つは、彼らが常に抱いていた「生き残り」への危機感だろう。すべてに優先するこの目標を皆で共有し、安易に他者を頼らず、他の手段なきと思えば、自ら武器を持って敢然と戦った。

当時のヴェネツィア、シンガポール、日本には共通点が多い。しかし、生き残るという至上命題に対して、現在の日本は彼らと同じレベルで真剣に向き合っていると言えるだろうか。今、読み返したい一冊だ。