真夏の夕方と真冬の朝の家事が快適なキッチンにしよう

今、キッチンの設備はIHクッキングヒーターや食洗機などを筆頭に、高機能化しています。カタログなどを見ればこれらの新商品に目を奪われるのも無理はありません。しかしキッチンをリフォームするにあたって、機能を充実させることよりももっと大事なことがあります。それが「部屋としての居心地をよくする」こと。つまり、いくら最新式のシステムキッチンを導入したところで、夏は暑くていられないとか、冬は寒くてお米をとぐのがおっくうになるようなキッチンでは意味がないということです。

主婦がキッチンにいる時間は、思っている以上に長いものです。しかも定年後はご主人が家で昼食も食べるわけですから、これまで以上に台所に立つ時間が増える。そのうえ、徐々に体力も衰えてくることを考えれば、炊事ストレスを軽減するようなキッチンを目指す必要があります。

真夏の夕方など、暑くてとても火のそばに近寄る気になれないなら冷房を入れるべき。とりわけ炊事ストレスを軽減してくれるのがIHクッキングヒーターです。

また、真冬の朝は立っているだけで足元からしんしんと冷えてくるものです。その場合は、暖房をつけるべきです。特におすすめしたいのは床暖房です。電気式なら工事も簡単ですし、キッチンは面積も狭いので、ほかの工事と一緒にやれば5万円ほどでできるケースもあります。

キッチンにいるときは立っていることが多いため、立ちっぱなしでも疲れない工夫をするといいでしょう。膝や足首にやさしい、クッションフロアやコルクなどの柔らかい床材がおすすめです。たとえばインゲンの筋取りのような時間のかかる下ごしらえをするときなど、ちょっと腰掛けられる椅子があるとかなり違います。そのとき足が入るよう、シンクの下を少しくぼませておくなど工夫をすれば、体勢が自然で楽になります。台所専用の椅子の置き場も忘れずに確保しておきましょう。「ダイニングの椅子を運んでくればいいわ」という考えでは、結局面倒になってやらなくなります。ちょっとした不満や不便はその場で解決できるようなプランにすることが、成功するリフォームのコツです。

定年後は、ご主人も台所に立つ機会が多くなるでしょう。今まで家事は何もしてこなかったという人でも、簡単な台所仕事くらいはしてほしいと思う奥様も少なくないはずです。並んでキッチンに立つのなら、シンクとコンロの前の通路は1メートル強は必要です。これくらいの幅があれば、2人の人間がすれ違うことができます。

最後に、もっと楽しい炊事時間にするために、キッチン自体のインテリアをセンスのいいものにして、そこにいるだけで楽しい部屋にしてみましょう。

とりわけ重要なのが、シンクの前に立ったときの眺めです。1日3食を自宅で取るようになると、ここにいる時間が圧倒的に長くなるからです。ただの壁とにらめっこしながらお皿を洗うのと、窓の外の植物の育ち具合を楽しみながら洗うのとでは大違いです。窓が無理ならば、例えばイタリア製のきれいなタイルを貼る、小型のテレビを置くなどの工夫で、毎日の炊事ストレスはぐっと軽くなるはずです。

(構成=長山清子)