姿勢のよくない人が多い。仕事にPCが導入されて以来、猫背の人が増えたように思う。姿勢が悪いと肩こりや腰痛になりやすいし、見た目もよくない。正しい姿勢を保つのにいい方法はないものか……。

そんな悩みを解決してくれる朝礼を行っている企業がある。1904年、日本で初めて「デパートメントストア宣言」をした三越百貨店がそれだ。日本橋本店のカスタマーサービス部では毎日、開店前に朝礼を行い、部員同士で「美しい姿勢と正しいお辞儀」をチェックしている。

まるで舞台の開演前のような緊張感の中、行われる。「接待係は三越の中でもお手本であるべき」だそうだ。

まるで舞台の開演前のような緊張感の中、行われる。「接待係は三越の中でもお手本であるべき」だそうだ。

カスタマーサービス部は店内の案内、エレベーターへの同乗、買い物相談といったサービスをしている部門で、女性が大半を占める。朝礼の開始は午前9時45分。開店の15分前である。

「みなさん、おはようございます。まもなく朝礼の時間です」と店内放送が流れると、本館1階のエレベーター前には20名ほどの部員が集まる。そして、当日の担当が司会者となって朝礼が始まる。内容は次の通り。

・連絡事項の伝達
  ・ご賞詞、クレームの発表
  ご賞詞とは「素晴らしいサービスだった」という客からのほめ言葉のこと。
  ・姿勢とお辞儀の研修
  2列になり、向かい合って行われる。

その日の司会はサービスアテンダントの安藤友紀さんだった。

「みなさん、まずは背すじが伸びているかどうか確認してください。天井から一本の線が頭の中心を貫いているかどうか、チェックしてください」

安藤さんは続ける。「笑顔も忘れないでくださいね。美しい姿勢と笑顔はサービス業の原点ですから」。

朝礼の後、安藤さんはこう付け加えた。「姿勢をよくするには毎日やることです。今日教えたからといってすぐに姿勢がよくなるわけではありません。継続こそが力です」。

(尾関裕士=撮影)