金融危機から経済危機へと世界経済は悪化の一途をたどっている。「サブプライムの暗号」から1年。アメリカで、ヨーロッパで今、何が起きているのか。個人はどう動けばいいのか。これをすべて明かそう。

最悪期を脱したアメリカの金融市場

<strong>マークイットグループ日本支社代表取締役 水谷克己</strong>●1964年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。主要外資系証券会社で金融商品開発の責任者を務め、2005年に金融商品の時価評価と検証業務を行うマークイットグループ日本支社を設立。日本の金融市場の透明化にも力を注いでいる。
マークイットグループ日本支社代表取締役 水谷克己●1964年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。主要外資系証券会社で金融商品開発の責任者を務め、2005年に金融商品の時価評価と検証業務を行うマークイットグループ日本支社を設立。日本の金融市場の透明化にも力を注いでいる。

昨年2月に発売されたPRESIDENT(2008年3月17日号)で、私はサブプライム問題について意見を述べさせていただいた。

振り返ると、当時、問題となっていたのは、まだサブプライム分野とCDS(クレジット・デフォルト・スワップ/企業の信用リスクを取引する商品)取引ぐらいのものだった。その影響で株価の下落が続いていたが、日本から見れば、まだ“対岸の火事”にすぎなかった。

また、アメリカの金融市場で大きな混乱があり、日本でも株価の下げが加速するかもしれないとも述べた。しかし、個人投資家はパニックを起こすことなく冷静に対処し、市場の安定を待って、日本人として自信が持てる銘柄を買い支えるべきだとも主張した。

あれから1年あまり。あえて詳しく語る必要もないだろう。予想は現実のものとなって、世界の金融市場の風景は一変した。昨年9月のリーマン・ブラザーズ破綻を契機に金融危機はより深刻の度合いを深め、実体経済は主要国でも新興国でも、急速に悪化の一途をたどっている。世界は、まさに「100年に一度の経済危機」に見舞われている。

しかし、世界を揺るがす金融危機の実相は、個人投資家はもちろん、一般の人たちにも非常にわかりにくい。これではただひたすら身構えるばかりで、備えることも対処することもできない。

危機が一気に進み、いまだに収束する気配のない今、改めて一般の人たちに金融市場の動きをつまびらかにすることが必要になっている。そこで一般では知ることのできない最新の金融情報をここで明らかにし、今後の備えと動き方についてアドバイスしておきたい。