東京支社 城南集合住宅営業所 所長 
神田康児 

1974年、東京都生まれ。97年、中央大学経済学部卒業後、大和ハウス入社。練馬集合住宅営業所を経て、2009年、異例の若さで所長就任。営業マン時代からトップクラスの成績を維持。

タスクの記入に4色ボールペンと蛍光ペンを使い分けるのは、単に区分けや優先順位を示すためだけではない。

「仕事をこなすだけになっていないか」「プラスアルファの営業努力をしているか」と、自身を鼓舞するための工夫だった。

大和ハウス工業のトップ営業マンとして、30代半ばで早くも所長となった神田康児さん。職務は集合住宅の営業である。担当エリアの土地所有者に、マンション・アパート経営による土地活用のプランを示して契約を行い、竣工後も定期的にアフターフォローを行う仕事だ。

いつも持ち歩いている小ぶりの手帳には、アポイントや会議など重要度の高い事項を赤、アポイント以外の飛び込み営業などを青、顧客へのメールやファクスを緑、資料作成などの事務作業の予定を黒で記入している。

赤の記入の多さが仕事の充実ぶりのバロメーターに思えるが、「赤だけでなく、青の書き込みも重要なんです」と神田さんは強調する。飛び込み営業のような今後の新規開拓に向けた活動ができているかどうかが、2、3カ月先の成果を左右するからだ。また全体に白地が多いと、「空いているときにやればいい」と、仕事を先送りにする甘えが出るので、空欄は極力埋めて、手帳をあえて「汚す」ことにしている。結果、スケジュールは常に2週間先まで埋まっているという。

では、急な用件や顧客の要望にどう対応するのか。「お客様から『すぐ来てほしい』と言われても、手ぶらで駆けつけるより、きちんと詰めた提案内容を携えて訪問したほうがいいと思うんです。お客様にも『こういう準備をしてから伺います』と説明すれば、訪問が少々遅くなってもたいていは理解してもらえます。ただし、それが3週間後、1カ月後となると遅すぎるので、2週間以内と考えているんです」。

実際に「すぐに来られない多忙な営業マンのほうが仕事ができそうだから」と、並みいる競合他社を抑えて成約にこぎ着けたケースもあったという。

会社で支給されるポケットサイズの手帳にペンを3種類引っかける形で持ち歩いている。予定が確定した時点でパソコンのスケジューラーにも転記するが、携帯から書き込むこともある。

会社で支給されるポケットサイズの手帳にペンを3種類引っかける形で持ち歩いている。予定が確定した時点でパソコンのスケジューラーにも転記するが、携帯から書き込むこともある。

所長になってからは、自分だけでなく部下のスケジュールにも目を配っている。グループウエアのスケジューラーで、社員一人一人の記入内容が確認できるので、リーダークラスの部下なら既存顧客のアポイントに追われて新規営業が手薄にならないよう、また若手社員はアポイントが入らなくても、1日1日の作業計画を立てて、それを実行するように促している。これは日々の仕事に達成感を持たせ、モチベーションを維持するうえでも重要だという。

「お客様は土地活用を3年先、5年先という長いタームで考えます。ですからこちらが契約だけをゴールと思うと、達成ははるか先の雲の上の話になってしまう。だから新人のうちは小さなことでいいから計画を立て、完遂したと実感を持ってもらうことが大事なのです」

神田さんが手帳に書いた行動予定を遂行するたび、1つ1つ×印で消すようになったのも、小さくてもいいから達成感を味わうためだった。手帳を通して得たモチベーション維持法は、自己の業績アップと部下の指導に役立っている。