1990年代前半の大不況から見事に抜け出したフィンランド経済。復興を支えたのは、企業が人材再活性化のためにこぞって採り入れた「リチーミング」と呼ばれるプログラムだった。

たった2日の研修で社員に気力が満ち、雰囲気が一変した

「上司と部下との意識が統一され、一つの目標に向かってさらに力を合わせていこうという気力が満ち溢れるようになりました。たった2日前のチームとは見違えるほどです」と語るのは、金沢を地盤とする技術集約型商社・三谷産業の中川景介常務である。

情報システムや化学品に強く、前年度の連結売上高が518億円強に達する三谷産業は、21の連結子会社からなるグループを形成している。前から事業の再編・強化を進めており、その一環として昨年、本体の人事部がグループ全体の人事を見ることになった。

しかし、全グループの従業員数は1400人強。450人弱の本体と比べて約3倍の規模であり、それだけ仕事の負担が増える。また新しい部長が他の部署から就いたこともあって、10人いる人事部の精鋭スタッフたちの心のなかに「どうなるのだろう……」という不安が芽生え始めた。

そこで人事部を預かる中川常務が「本来の元気のあるチームに戻り、積極的に課題に取り組んでほしい」と考え、白羽の矢を立てたのが「リチーミング(reteaming)」の研修だった。昨年9月に行われた2日間の研修には新任の部長とともに中川常務も参加、そこでチームの変化のありようを目の当たりにする。

あまり聞きなれない「リチーミング」という言葉だが、フィンランドの精神科医ベン・ファーマン氏と社会心理学者のタパニ・アホラ氏の2人によって、1990年代前半に開発された問題解決・チーム再構築のためのプログラムのこと。当初は問題を抱えた子どもたちを対象にした「キッズスキル」として開発・導入が進められた。

「しかし、次第に大人にも応用できることがわかってきました。そして、企業組織の再活性化に利用できるようにしたものがリチーミングです。自分では気づいていなくても、人は問題を解決する実行可能な方法をすでに持っているという考え方に基づいています」