山口さん(仮名) profile
年齢:55歳
年収2500万円 外資系のファッションブランドのトップを10年間務めている。
貯蓄 2500万円 株や投資信託などはいっさいやらない。
住居平日は都内のシティホテルで生活。週末は熱海の一戸建てで暮らす。温泉付きで値段は6500万円だった。
月の生活費約50万円
10年後のビジョン10年後に会社勤めは引退の予定。年金のほかに現金で3000万円貯金。できればその前に再婚して熱海で2人で暮らしていきたい。

名古屋生まれ。商社勤務を経て現在、外資系ファッションブランドの社長を務める山口さん。平日は都内のシティホテル、週末は、熱海の一戸建てで過ごす日々。「ホテル暮らしは敷金、礼金なし。光熱費からリネン代も込みだから、年契約すれば意外にコスト安」ある種、男の夢の生活を実現する。

山口さん(仮名)は55歳。独身。離婚歴あり、前の奥さんとの間にできたひとり娘は大学を出て留学している。彼は外資のファッションブランドの社長を10年務めている。年収は2500万円。熱海に温泉付き一戸建ての広い家を持ち、週日は東京のオフィスに通勤、シティホテルに暮らしている。

「仕事ばっかりですよ。去年は海外へ25回も出張してました。年を取ってきたから、だんだん時差ボケが厳しくなってきた。外資系の経営者は赤字を出しちゃダメ。毎年、必ず利益を上げなきゃならない。利益を出せない経営者はすぐにクビ。私の場合、10年も業績を伸ばしているでしょう。これからは大変です。だから、もう少ししたら、ほかのブランドの社長をやるかもしれません。このところ、そういったヘッドハンティングの話がたくさんきていますし……。熱海にうちを買ったのは、東京に近いことと環境が気に入ったこと。それに温泉もあるし、食事がおいしい。寿司は東京のほうがうまいけれど、イタリア料理、中華は名店がある。休日の夕方、ベランダへ出て相模湾に夕陽が沈むのを見てると最高ですね。心まで洗われます」

山口さんが東京暮らしの利点を語る。

「熱海にうちを買うまで2年間、東京プリンスホテルに暮らしていました。ダブルにひとりで。まあ、時々、ダブルにふたりで寝たりもしましたけれど。僕は23歳で結婚して子どもをつくり、31歳で離婚しました。それから独身生活が24年。いろいろな人と付き合いましたけれど、結婚はしなかった。どうしてって? うーん、付き合うのはいいけれど、若い相手と結婚したら、『子どもが欲しい』となってしまう。50過ぎてから子どもを産むと、その子が成人するまで責任を持たなくちゃならない。僕としては60歳を過ぎてから、40歳くらいの人と平和な結婚をしたいと思っています。

ホテル暮らしをしていた頃は毎晩、銀座でクラブ遊びをしていました。飲み代は大したことない。せいぜい年間で200万円くらい。ほとんど自腹でした。みなさん、ご存じのように水商売は擬似恋愛です。キスくらいはあるけれど、セックスまでの関係にはなかなか……。あっ、でも1、2回はあったかもしれない。いや、3、4回かな。

今は友人に誘われて『主婦合コン』に参加してます。35から40歳くらいの主婦と居酒屋で会っておしゃべりするだけ。銀座のクラブへ行くよりも刺激があるし、飽きません。みんなきれいだし、どんどん友達を紹介してくれる。なかには『山口さんの家に遊びに行きたい』って人もいるけれど、そういう人を呼んで、ああいう関係になって、その後ドロドロになるのが嫌だから、うちには絶対に呼びません。それは鉄則。主婦の人たちが合コンに出てくるのは旦那以外の男性から褒められたいからですよ。旦那は疲れて帰って寝るだけでしょう。セックスする気力も体力も残ってないんじゃないかなあ。だから、僕は合コンの席ではとにかく褒めることに徹します。

『私なんかおばちゃんでしょ』なんて言う主婦には『そんなことないよ。果物でも腐る寸前がいちばんおいしいんだから。女性だって若けりゃいいってもんじゃないよ』とホメてあげる」

ホームグラウンドの銀座を彷徨する山口さん。かつては年間200万円を投入し、フィリピンパブにはまっていたこともある。現在はいそいそと「主婦合コン」に出かける毎日だ。
ホームグラウンドの銀座を彷徨する山口さん。かつては年間200万円を投入し、フィリピンパブにはまっていたこともある。現在はいそいそと「主婦合コン」に出かける毎日だ。

そんな山口さんだが、将来設計をどう考えているのか。

「あと10年働いて引退します。引退後には年金のほかに現金で3000万円持っていればいいと自分なりに計算してます。それまでにできれば結婚したい。老後は熱海で暮らします。僕は株もやったことないし、投資信託とか金融商品は関心ありません。投資や運用にかけるエネルギーがもったいない。それより真剣に仕事をしていたほうが刺激もあるし、金にもなる。だいたい今はお金かからないし。主婦合コンはひとり6000円くらいの居酒屋だから。

熱海に暮らしていて不便なのは病院だけかなあ。夜中に急病になったらどこへ回されるかわからない。地方での暮らしで不安を感じるのは病院だけ。そうですね。75歳くらいになって、まだ結婚していなかったらもう一度、都心でホテル暮らしをするかもしれません。そのときはダブルに寂しくひとりで住むしかないかな……」

なぜ主婦合コンへ行くのかという私の問いに、山口さんは「刺激とバリエーションがあるから」と答えた。彼の言うように、定年後の暮らしに必要なのは「刺激とバリエーション」だと、私は思う。

(撮影=尾関裕士)