マネジャーは往々にして自分の部署が創造した価値を過大評価する傾向がある。だが、終始一貫して価値を生み出せる一流のバリュー・クリエーターは、自分自身のバイアスを調整し、他部門の価値創造活動への目配りを忘れない。

最も成功するマネジャーは、自社のニーズの変化を背景に終始一貫して価値を生み出せる人物である。競合他社や市場の動向に対応して自社が戦略を変えるとき、彼らは、会社の価値を生み出すと同時に、それに劣らず重要な職業上の能力や個人としての能力を開発していくため、自らの戦略を変えることができる。

彼らは組織の価値創造と個人の価値創造はパラレルな関係にあることを認識している。また、自分がどのような価値創造活動を選ぶかは自分自身のバイアス(偏り)に大きく左右されるということを理解し、それに対処することができる。

価値を創造するためには、まず自社の戦略を明確に理解しなければならないが、それだけでは不十分だと、ワシントン大学、オーリン・スクール・オブ・ビジネスの財務学教授、アンジャン・セイカーは言う。

自分の部署以外の部署で行われている活動の価値を認識する必要があるのだが、これができているマネジャーはほとんどいない。セイカーらが開発した「多視点モデル(multiple-perspective model)」は、マネジャーが自分の部署や会社全体の成功に他の部署の活動がどれほど貢献しているかを認識できるよう、価値創造へのさまざまな経路間の避けがたい緊張を取り除くのに役立つ。また、組織レベルと個人レベルの両方で同時に価値を生み出せるのだと、より強く認識させることによって、マネジャーがより的確に仕事の優先順位を決められるよう手助けすることもできる。