全国の新聞・テレビ・通信社が加盟する「社団法人・日本記者クラブ」発行の「日本記者クラブ会報」が関係者の間で話題になっている。会報の6月10日号に掲載された「原発問題を考える 報道の視点から」という座談会の中で、全国紙の元論説委員らが原発報道を巡って侃侃諤諤の議論を展開しているのだ。

「座談会出席者は原発推進派の読売、朝日の元論説委員と、司会役で同じく推進派とみられる産経の現役論説委員、そして原発に批判的な毎日の元論説委員の4人です」(全国紙の科学部記者)

読売氏がインド・中国など新興国が原発を推進しているとして「いま福島の事故でちょっとした足踏みをしているかもしれないけど、あの勢いはまた復活するんじゃないかと思いますね」と言うと、朝日氏も「福島があってからは『原子力と人類は両立できない』というインテリが私の周りにはすごくいっぱいいます」

「(彼らは)一たび原子力発電所が事故を起こしたら、そこには、もう人が住めなくなると信じている」。これに毎日氏が「(原発推進の機運は)もう来ないんじゃないかなあ」と応じるといった具合。

注目は、電力会社が打つ政府・電力会社の原発推進広告を巡る見解の違いだ。

毎日氏は、「(広告の影響で)電力会社の原子力推進に対して(新聞が)厳しく書けなかったんじゃないかという論評や記事が増えている」と指摘、「多額の広告代をもらうマスコミは批判が緩み、巨悪と添い寝してきた(中略)といった批判がありましたね。ある意味では核心をついている」と言うと、読売氏は「広告を載せるから記者が遠慮して書かないということはない」と反論、朝日氏が同調すると、毎日氏が「ちょっと違いますよ、それは。電力会社からの指摘というか抗議を現場に下ろすマスコミトップはいたし、原子力の専門家からは『原子力問題をきちんと書く記者はどういうわけか左遷させられている』という話も聞きました」と反論しているのだ。

議論は完全なすれ違い。結論も、推進派3名が“脱原発のためには日本の人口が半減する必要があり、それはムリ”と主張、一方、毎日氏は“生活水準が下がっても仕方がない”との立場だ。あなたはどう考える?