新型コロナウイルスの影響で、観光業が大打撃を受けている。突破口はあるのか。35年にわたり箱根で外国人旅行者向けのゲストハウスを運営する高橋正美氏は、「観光業の事業者は、今までお金もうけに重きを置きすぎていた。時間のある今こそ人材育成に力を入れ、もてなしの心を育てるべきだ」という——。

3月の訪日外国人は31年ぶりの20万人割れに

2019年に訪日外国人数が年間3188万人となったインバウンド観光が急速にしぼんでいる。日本政府観光局が4月15日に発表した3月の訪日外客数は前年同期比93%減の19万3700人となり、31年ぶりの20万人割れに。東京の浅草や京都の嵐山などの有名観光地からは外国人に加え日本人旅行者も姿を消し、地元住民以外の往来もなく閑散としている。

人けもなく、シャッターが下ろされたままの、箱根湯本駅前の商店街。
写真=筆者提供
人けもなく、シャッターが下ろされたままの、箱根湯本駅前の商店街。

東京商工リサーチによると、5月14日時点で「新型コロナウイルス」関連の経営破綻は全国で累計147件、うち30件は宿泊業、飲食店が21件(いずれも準備中含む)。観光への影響範囲は宿泊や飲食に限らず、地方で観光バス事業を営む会社は、貸し切りから定期路線バスまですべて運行停止し、日本政策金融公庫による特別貸付、雇用調整助成金、税と社会保険の納付猶予など、緊急経済対策108兆円から使える限りのセーフティーネットを総動員し、状況の好転をひたすら待っている。