病院で働いているのは医師や看護師だけではない。ほとんどの患者が最初に病院の人間と顔を合わせるのが受付にいる「外来クラーク」である。鳥取大学医学部附属病院で外来クラークを務める鷲見万里子さんは「医療と無縁の世界で生きてきた私にとって、大学病院での仕事は戸惑うことばかりだった」という――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 4杯目』の一部を再編集したものです。

仕事選びの基準は「人と話すことが好き」というだけ

(写真右)鳥取大学医学部附属病院で外来クラークを担当する鷲見万里子さん
撮影=中村 治
(写真右)鳥取大学医学部附属病院で外来クラークを担当する鷲見万里子さん

誰と出会うか、どんな環境にいるか、そこで何を感じるか――。巡り合わせで人生は大きく変わるものだ。

鷲見万里子もそんな一人である。

鷲見は1986年6月に島根県松江市で生まれた。高校卒業後、飲食店、美容関係などで働いた。腰が据わらなかったのは、どれも自分にはしっくりこなかったからだという。

「特にやりたいことがなかったんです。人と話すことが好き、というだけで仕事を選んでいましたね」

夢なく生きてきたって感じですか、とはにかんだ。

そんな彼女が焦りだしたのは、高校卒業から10年近くが経ち、20代の後半に差し掛かってきた時期だった。

「年齢を考えたら、このままじゃいけない。いろんな人に話を聞いたり、ハローワークで職業相談したり。これまでの経験を生かすにはどうしたらいいと考えたときに、外来クラークという仕事がありますよって、ハローワークで教えられたんです」

クラークは英語で事務員を意味する。外来クラークは、主に受付業務に担当する職員のことだ。

「職業訓練校で8カ月間、医療事務について学びました。医事会計の点数、病院事務に必要な知識、電子カルテの操作法とかですね。その後、病院で実習させてもらった後、ここの面接を受けたんです」

鷲見はそういって下を指差して笑った。