医療従事者やスーパー店員、宅配業者など、リモートワークのできない仕事で新型コロナウイルスに感染したら、労災は適用されるのか。ジャーナリストの村上敬氏が、労務問題に詳しい千葉博弁護士に話を聞いた——。
スーパーでレジ待ちする買い物客=2020年3月27日、東京都練馬区
写真=時事通信フォト
スーパーでレジ待ちする買い物客=2020年3月27日、東京都練馬区

在宅勤務ができない「エッセンシャルワーカー」たち

新型コロナウイルスの影響で、リモートワークを取り入れる企業が増えている。オフィスや通勤電車の「3密」が感染拡大の要因になり得ることを考えると、たしかにムダな出勤はできるかぎり減らしたいところだ。

ただ、世の中にはリモートワークができない仕事が数多くある。代表格は、“エッセンシャルワーカー”が従事する仕事だろう。いま最前線でコロナの検査・治療に当たっている医療業界や、公共交通、介護、スーパー、物流などの業界は、従業員が現場に行かなければサービスを提供できない。国民生活の根幹部分は、まさにリモートワークできない人たちによって支えられている。

オフィスワーカーも、すべてが即座にリモートに置き換えられるわけではない。いまだに紙の帳票があり、その処理のために定期的にオフィスに出勤している会社員は少なくない。コロナ対策でデジタル化・リモート化の動きは一気に加速しているが、まだ過渡期であることを忘れてはいけない。

さまざまな事情で出勤せざるを得ない人たちにとって最大の不安は、コロナの感染リスク、そして万が一のときの補償だろう。エッセンシャルワーカーも、できれば“ステイホーム”したいというのが本音に違いない。社会あるいは会社の要請でやむなく出勤しているのに、罹患りかんして補償が十分でなかったら目も当てられない。実際のところ、出勤して罹患した場合の補償はどうなっているのか。