「時間の使い方」「数字に強くなる」といった「子ども向け実用書」が売れている。ライターの飯田一史氏は「このジャンルを作ったのは、旺文社の『学校では教えてくれない大切なこと』というシリーズ。ヒットの背景には3つの軸がある」という——。

今、子ども向け実用書がアツい

友達との付き合い方や勉強法、整理整頓術……。書店では、こんなテーマを扱った子ども向けの「実用書」が人気を集めている。特集した棚ができるほど本の種類も増え、今や新しいジャンルとして確立されたと言える。

『学校では教えてくれない大切なこと 1 整理整頓』(旺文社)
『学校では教えてくれない大切なこと 1 整理整頓』(旺文社)

この新ジャンルの開拓者は、英語や数学など、教科別の教材を長年作ってきた中堅出版社・旺文社だ。

2015年7月から刊行している『学校では教えてくれない大切なこと』(全29タイトル)はすでに累計200万部を突破する人気シリーズとなっている。『時間の使い方』『夢のかなえ方』『数字に強くなる』など、大人向けのビジネス書同様のテーマが扱われている。

そんな本が小学生、特に3、4年生を中心に読まれているというのだ。旺文社はいかにして「子ども向け実用書」という新ジャンルを築いたのか。

ヒットを生んだ「3つの軸」と「親に刺さるテーマ」

きっかけは「教科外の力も身に付けさせたい」という保護者の声だった。私たちは本当に教科別の教材を作っているだけでいいのか。その結果、出てきた企画が『学校では教えてくれない大切なこと』というシリーズだった。

2015年7月の第1弾は『整理整頓』『友だち関係 自分と仲良く』『お金のこと』の3冊だった。親のニーズや大人向けの実用書を分析し、「自分のこと」「相手のこと」「世の中のこと」という3つの軸を作り、そこから1冊ごとのテーマを決めた。