今、あなたはどんなセックスをしてますか?

まずはキスをして、おっぱいをチュチュッとなめて前戯をすませ、局部を刺激した後、挿入して射精する……。このような性欲に駆り立てられて行う既存のセックスは、私から言わせればただの生殖行為にすぎません。男性の動物的な本能で短絡的に性欲を処理する、いわばジャンクセックスです。

本来、人間のセックスは、肉体的な満足感はもちろん、愛を深めるための行為であるはず。私が提唱する「スローセックス」はその原点に立ち返り、お互いが気持ちよくなって幸福感に包まれ、精神的なぬくもりを楽しむことを目的とします。

その特徴として、スローセックスは、“イク”にこだわりません。イクことに固執していると、乱暴なセックスに走り、愛し愛される行為がおろそかになってしまうからです。“イク”よりも重要なのは、“感じる”こと。もしも快感がコップ一杯の水だとするならば、“感じる”はコップに水が注がれて溜まっていく時間に該当します。対して“イク”はコップ一杯にたまった水があふれ出す瞬間です。

つまり性エネルギーの充填が“感じる”であり、爆発現象が“イク”。スローセックスでは時間をかけて“感じる”を楽しみ、お互いの性エネルギーを極限まで高めていくのです。そうしたセックスにシフトすると、女性はこれまでのようにイッたフリをしなくてもすむので、余計な負担がかかりません。

驚かれる人がいるかもしれませんが、“イク”にこだわらないというのは、射精を放棄すること。もちろん射精しても構いませんが、「射精したらセックスは終わり」という常識にとらわれてはいけない。そうなると過程がおざなりになりますから。射精を忘れてたっぷり愛撫してあげれば、女性はびっくりするほど感じます。究極の女性美とでも呼ぶべき姿を目撃できることは、射精以上の喜びになるはずです。

ただし注意したいのは、セックスは愛があれば、それだけでいいというものではないこと。たしかに性エネルギーを高めていくために愛の強さは大切。しかし、テクニックが不足していれば期待はずれに終わってしまうこともあります。だから正しい技術が不可欠なのです。女性を感じさせるために、性豪である必要はありません。基本的なテクニックは誰でも身につけることができます。

スローセックスは、まず女性をリラックスさせるところから始めましょう。それから徐々に女性の体を愛撫し、性的興奮を高めていく。アダルトビデオの影響か、男性本位の無茶なことをさせる人がいますが、それで興奮する女性は一握り。「ペニスを突っ込めば女は感じる」という考えも大きな間違いです。前戯もなしで感じるわけがない。何より大切なのは、女性に「私は愛されている」という気持ちになってもらうこと。そうなると女性の気持ちが解放され、性を感じる脳が開いていく。結果、感度がよくなるんです。

愛撫の方法を誤解している人も多い。基本は、超がつくほどのやさしいタッチです。女性は全身が性感帯。乳首とクリトリスだけでなく、髪の毛、首筋、鎖骨、腰、背中、足の裏など、全身にたっぷり触れていく。そうやって性感脳が開いた後、クリトリスを十分に愛撫すると、女性は深い官能の世界に入っていきます。

スローセックスは、その名前から、ただ単に長い時間をかけたセックスと誤解されることがあります。確かに2時間、3時間かかることもありますが、間延びしてダラダラやればいいというものでもない。あるときは前戯だけの場合もあるし、あるときはクンニしてイカせたら、おしまいということも。

私の場合、朝勃ちした自分のペニスにオイルを塗って、寝ている奥さんに後ろから挿入。そのまま腰も動かさないで、しばらくしたら射精せずに抜くこともあります。たゆたう感覚になって、何とも言えない一体感を得ることができるんですよ。

絶頂を迎える瞬間も確かに快感ですが、それ以外の快感を共有して、お互いの性エネルギーを増幅させる行為はさらに気持ちがいい。それを実現させるセックスが、スローセックスなんです。

(構成=鈴木 工)