旅の達人は、旅先でどう過ごすのか。世界1200以上の都市を自分の足で歩いてきた立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏は「僕の海外一人旅は好奇心の赴くままにチケットだけを取る。後はノープランで、写真も撮らない」という——。
APU学長の出口治明氏
撮影=藤原武史
APU学長の出口治明氏

考えるより先に現場に行った方が学べる

人間が賢くなるために必要なのは「人・本・旅」の3つだというのが僕の持論です。いろんな人に会い、たくさん本を読み、自分の足で歩いて広い世界を見る。

3つの中で「旅」はハードルが高いと思われるかもしれませんが、簡単に言えば「現場に行くこと」です。たとえば友人から「おいしいパン屋ができた」と教えてもらうと、どんなにおいしいんだろうと食べてみたくなります。そう思ったらすぐに行って、買って食べて、味わってみることです。

僕がそう話すと「わざわざ行ってまずかったらどうすんねん」と反応する友人がいました。でもまずかったら、「あいつの舌はアテにならん」ということが分かる。自分の中で腹落ちするので何も損はないのです。まさに百聞は一見にしかず。考えている暇があったら現場に行って体験した方が学びが多いですよね。

この旅による学びを最大化するにはちょっとしたコツがあります。そのコツはシンプルで、自分の好奇心に素直になること。そしてルールを決めずに現場でしか味わえないことに集中することです。

僕は本を読んで訪ねたくなった町は自分の目で見たいですし、おいしそうだと思えば自分の舌で味わってみたい。そのために現地に行く。教えてもらったパン屋へ行くのも動機は同じです。旅はまず目的ありきです。