感性を研ぎ澄まし自分の頭で考える

<strong>柴田励司</strong>●1962年、東京都生まれ。上智大学文学部卒。在蘭日本大使館、京王プラザホテル人事部、コンサルティング会社社長などを経て、昨年より現職。
柴田励司●1962年、東京都生まれ。上智大学文学部卒。在蘭日本大使館、京王プラザホテル人事部、コンサルティング会社社長などを経て、昨年より現職。

今の30歳くらいまでの中堅社員は会社から細かい指示や教育を受けて育ったマニュアル世代であり、ゼロから自分で考えるクセがついていない。しかし、今後は過去のモデルは参考にはなるが、絶対的な武器にはならないし、自分の頭で考えていかなければ前に進まない時代である。

とくに部下や上司もいる中間管理職は、タテ、ヨコ、ナナメを見ながら、過去との整合性をとりつつうまく答えを探し出していく難しい立場にある。そこで新しいことを仕掛けていくには過去の組み替えが必要になるが、そのヒントはどこにもない。

大事なことは自分の目で見、耳で聞いて確認するクセをつけること、それから自分の感性を研ぎ澄ますことを意識して行動することだ。それには好きな映画や舞台を見る、音楽を聴く、絵画を鑑賞するなど芸術に触れるのがよい。何でもいい、無理をせずその時々の自分に一番フィットするものを見つけて楽しむことだ。

仕事においては上司・部下の関係をあまり気にせず、自分の信念に基づいて行動したほうがよい。どうすれば上司の意にかない、査定がよくなるかといったことは忘れたほうがよい。仕事の出来、不出来を決めるのはまず自分自身であり、2番目がお客様、3番目が上司であるべきだ。

仕事ができる人というのは、たいてい上司のことは気にしていない。昔からそうである。上司に使われるのではなく、上司は使うものだと思って仕事をしている人が多い。たぶん上司の側も自分を使ってくれと思っているだろう。上下の関係ではなく、自分の仕事をするうえでのパートナーとして接することが必要だ。

私自身がさまざまなビジネス体験を通じてこのように考えるに至った“気づき”を与えてくれた本がある。最初に出合ったのが『負けてたまるか!』。小学校4年の頃、ミュンヘンオリンピックで金メダルに輝いた男子バレーボールチームの試合中継を夜中に布団の中でラジオで聞いて興奮し、買い求めた本だ。日本チームを率いる松平康隆監督の優勝するための周到な戦略と選手の指導法が書かれている。この中に選手個人の学歴などの生活環境や性格の違いによって叱り方を変えているとあったが、なるほど人によって接し方が違うのだなということを学び、子供心にいろんな気づきをもらえた。