東京都で新型コロナウイルスの感染者数が増え続けている。その影響で東京から地方へ「コロナ疎開」をする人も出てきている。統計データ分析家の本川裕氏は「10万人当たりの感染者数(感染率)を調べると、東京より福井のほうが高い。感染リスクから逃れるために東京脱出を図るのは合理的な行動とはいえない」という――。

感染者数ワースト1位は東京都だが、感染率ワースト1位は福井県

4月4日、東京都で新たに確認された新型コロナウイルス感染者が118人と初めて100人を超え、累計は891人となった。翌5日には143人が確認され、累計は1034人になっている。こうした発表を受け、首都を中心に全国で感染爆発が起こるのではないかという不安や懸念がますます強まりつつある。

感染者数は実数で報道されることが多い。確かに値が大きい場合には、それがもたらす影響度も大きいので、実数の報道には大きな意味がある。しかし、人口約1300万人の東京と人口約78万人の福井とを比較して東京の感染者数が福井よりずっと多いといっても、感染リスクを正しく評価したことにはならないだろう。

今回は、国民的な関心事となっている都道府県別や都道府県内の地域別の感染者数について、実数と人口10万人当たりの数字(※)を見比べることによって、地域的な感染リスクの高低について見ていきたい。時間が経過するだけ新しいデータが発表される。ここで使用している値は4月5日17:00現在で入手可能なものまでである点を読者にはご了解いただきたい。

※筆者註:死因別死亡者数など保健医療関係の指標の場合には、人口10万人当たりの数字が使用されるのが通例。

図表1には、感染者数の多い都道府県ランキングを実数と人口10万人当たりの両方で示したデータを掲げた。

感染者数そのものについては、1位の東京が891人と2位の大阪の387人の2倍以上となっている。上位2都府が3位の神奈川以下を大きく上回っており、首都東京や関西の中心大阪の動きが極めて重大な局面にあることがうかがわれる。

3位以下、10位までの上位地域としては、北海道を除くと東西大都市圏の近郊地域や愛知、福岡といった中心都市が占めており、都市部の感染がウエートとして大きいといえる。

ところが、人口10万人当たりの感染者数(以下、「感染率」と呼ぶ)の都道府県ランキングは「実数」のランキングとはかなり様相を異にしている。何と1位は6.7人(10万人あたり、以下同)の福井であり、6.5人の東京は2位なのである。