コロナ相場で「落ちているナイフをつかむ」とケガをする

2月下旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界の株式や為替などの金融市場は大混乱に陥った。金融専門家の間では、今回のコロナウイルスによる混乱はリーマンショックを上回るとの予測もある。

東京市場/日経平均株価
写真=AFP/時事通信フォト

最大の問題点は、いつまでウイルスの感染拡大が続くか、その収束にどれだけの時間がかかるか読めないことだ。先行きが読めない状況に不安を募らせた投資家は、一時、価格の変動リスクのある資産を一斉に投げ売った。

そうした状況下、3月中旬、日経平均株価の平均的なPBR(株価純資産倍率)が0.8倍台まで低下した。それを見た一部の投資家は、「PBRが1.00を下回るほどの株価下落は行き過ぎている」と考えた。PBRが1.00を下回るということは、株価が一株当たりの純資産の価値=解散価値(企業が倒産などで解散する際に残る資産価値)を下回っていることを意味する。

企業が事業を続けて利益を上げられるならば、理論上、PBRが1.0倍を下回ることはあり得ないことだ。ということは、株価は売られ過ぎということになる。

ただ、その判断は慎重に行うべきだ。2020年、世界経済が“マイナス成長”に陥る展開は避けられそうにない。GDP成長率がマイナスになれば、企業の収益は落ち込み、資産の価値にも下押し圧力がかかる。

今後の展開次第では、PBRにさらなる下押し圧力がかかる可能性は排除しきれない。欧米の市場の格言に、「落ちているナイフをつかむな」がある。机から落下するナイフを素手でつかむとケガをするという意味だ。