日本航空は、2010年1月19日、会社更生法の適用を申請した。
日航と管財人の企業再生支援機構は同8月末、11年3月末までに約1万6000人のグループ従業員を削減する更生計画案を提出。希望退職を順次募集したが、パイロットと客室乗務員が未達成となった。結果、10年12月31日付でパイロット81人、CA84人の計165人を整理解雇した。

昨年11月末日づけで、特別早期退職しました。40代で、同期で退職した人は誰もいません。期日の数日前に決断したので家族も寝耳に水です。反対も賛成もしないと言ってくれましたが、不安だったでしょうね。

今回退職したのは50代の機長が多く、60歳近い方は退職金の積み増しと今後働く年数を計算して、決断されたんでしょう。純粋に後輩に席を譲るべきだという方もいます。年齢だけでなく、60日以上の病欠がある人は若くても早期退職の対象になった。でも小指を骨折しただけでパイロットは休職させられる。復帰にも審査が必要で、月1回しかないから、2カ月なんてあっという間。そういう人に白紙のスケジュールを渡して辞めろと圧力をかけるのは、理不尽だなと思いました。

辞めた理由ですか? 一言で言うのは難しいですね。僕の免許は747-400、いわゆる大型機で、ANAも含めて、今年中には日本から姿を消す機種です。小型機の免許を取りなおせば、今後もJALで飛ぶことは可能ですが。

ただ、今後JALが再生するにあたって、自分にどういう貢献ができるだろうかと考えた。残って努力する、というのもあります。しかし、小型機の乗務員が辞めると穴があいてしまうけれど、ジャンボの乗務員ならそうならない。サラリと辞めるのも、ひとつの選択肢だろうと思ったわけです。

一生懸命やっている人たちがいるので、役に立ちたい……でも、あくまでそれは特定の「人」のためであって、仕事もしないのにのうのうと残っている上司たちのためではないんです。会社って、最後は「人」だと思うから。

上で何があろうと、現場ではフライトを安全で快適に遂行する、ベストパフォーマンスを尽くすという以外のことは考えません。給料が低くなろうと、マネジメントが悪かろうと同じなんです。ある種、職人なんですね。

運よく組合の再就職支援でアジア系の外資に決まり、2月から海外移住です。JALの機長も4割減で平均年収1200万円になりますが、僕も以前の半分ぐらい。でも仕事はお金じゃないと思うのでベストを尽くします。

(市来朋久=撮影)