経営学者ピーター・F・ドラッカーは、21世紀は「知識社会」になり、働き方は大きく変わると指摘した。ドラッカー・スクールのジェレミー・ハンター准教授は「多くの人がネットワークや関係性に対してエネルギーを注ぎすぎて疲弊している」という――。(第2回)

※本稿はジェレミー・ハンター著『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

私たちは変わっていくことを求められる

2019年の10月に日本に台風19号ハギビスが脅威として近づいているとき、ニュースで繰り返し流れたフレーズは「過去の経験に頼っても、この状況の助けにはなりません」というものでした。

ジェレミー・ハンター著『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室』(プレジデント社)
ジェレミー・ハンター『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室』(プレジデント社)

この想像を絶する巨大な台風は、日本中に大災害をもたらしました。東京の西部では1メートルも浸水したところもあり、かつて一度も台風の影響を受けたことのないエリアでも被害が出ました。

このときわたしは仕事でノルウェーのオスローにいたのですが、ノルウェーの人口は530万人です。日本の台風19号で避難勧告の対象となった人数は600万人。オスローの人たちは、自分の国の人口よりも多い人たちが、安全のために避難勧告を受けるという可能性に愕然としていました。この災害は、日本にとっても世界にとっても、わたしたちの住むこの地球が以前とは違うものになりつつあるという警鐘となりました。

この本を書いているとき、わたしが住んでいるロサンゼルス近郊で山火事が起きました。北カリフォルニアでも、勢いを増した火が押し寄せ、町が焼けました。そのニュースを見て、このフレーズがまたわたしの頭の中で鳴り響いたのです。

「過去の経験に頼っても、この状況の助けにはなりません」

昨今の異常気象は、わたしたちが知りうる過去の経験を超えて変わってきたもののひとつでしかありません。人工知能(AI)の出現、高齢化によって変化していく社会、政治的な緊張とダイナミックな動き、これらすべての出来事は、これから何年もの間、絶え間なくわたしたちの心をざわつかせ続けることでしょう。

こうした現実をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかはわたしたち次第ですが、いずれにしても、わたしたちは変わっていくことを求められています。