新型コロナウイルスの感染者が増えている。いま個人が心がけるべきことは何か。医師の木村知氏は、「今後数カ月経ち、もし手軽に検査出来るようになった場合にも、ごく軽微な症状ならば安易に医療機関に行かないほうが安全。メリットがないばかりか、そこで別の感染症をもらうリスクもある」という――。
外出を控えるよう緊急事態宣言が出された翌日、JR札幌駅の改札口ではマスクをした人が多く見られた
写真=時事通信フォト
外出を控えるよう緊急事態宣言が出された翌日、JR札幌駅の改札口ではマスクをした人が多く見られた=2020年2月29日、札幌市中央区

60代の患者がたらい回しにされている

国内でも感染経路の追えない新型コロナウイルス感染者が増えてきた。私は感染症学や疫学の専門家ではない、いわゆる町医者だから、軽々にこのウイルスの特性や国内感染者数の見立て、今後の流行予測などを語るつもりはない。

だが、昨年、すでに中国でヒトーヒト感染が認められていたことを考えると、今年に入って急に国内感染者が発生し始めたと考えるほうが不自然ではないか、とは感じている。「公表されているよりも、潜在的には多くの感染者がいるのではないか」「国はなぜ検査件数を増やさないのだ」という声も日増しに高まっている。

先日、知人の医師が熱発と咳の続く60代女性を診察したときのことだ。胸部CT検査にて両側スリガラス肺炎像、採血検査も行い、ウイルス性肺炎を疑って保健所に連絡したところ、「コロナウイルス感染症を強く疑うものでなければ、医療機関同士で交渉して受け入れ先を決めるよう」と指示された。

その指示を受けて近隣の大学病院に連絡したところ、「当院はコロナ感染者のために、他の患者を転院させてまでベッドを空けている状況だ。コロナ感染者あるいはコロナ感染を強く疑うものでなければ受け入れられない」との理由で受け入れを断られたという。

その後、他の医療機関に電話で受け入れ要請を打診するも、「呼吸器専門医が不在にて受け入れ不可」「コロナの可能性が少しでもあるなら対応できない」と、実に計11カ所の医療機関に受け入れを断られたとのことだ。それでも保健所は、かたくなにPCR検査の適応外であるとの判断を変えないという。