埼玉県に本社を持つ「ぎょうざの満洲」は、ほかの中華料理チェーンとは戦略が大きく異なる。メニューにある品目はいずれもカロリーを抑えめで、揚げものは「鶏の塩唐揚げ」だけだ。その独自の戦略をノンフィクション作家の野地秩嘉氏が取材した——。

ラーメン420円の安さで健康志向

ぎょうざの満洲は、同名の中華料理チェーン「ぎょうざの満洲」を運営する企業だ。埼玉県を中心とした関東地区に84店舗、そのほか関西地区(大阪府、兵庫県)にも10店舗がある(2019年12月現在)。売り上げは83億6455万円(19年6月期)で従業員は約2000名(19年12月現在)となっている。

わたしが訪ねたのは東武東上線北坂戸駅を最寄りとする同チェーンの坂戸にっさい店だ。都心から1時間はかかるし、北坂戸駅からも車で10分はかかる。平日だったけれど、店は10時半に開店するとすぐに満員になった。なんといっても値段が安い。

焼餃子(6個、ボリュームあり)とライスで410円。チャーハン450円、満洲ラーメン(醤油味)420円。全国チェーンとなった同業の「餃子の王将」とほぼ同じ価格帯だ。

だが、「ぎょうざの満洲」は個性的なチェーンだ。同じ中華料理チェーンの「餃子の王将」「日高屋」「幸楽苑」とはまったく違う。競合にはならないと思う。

そのメニューは徹底した健康志向だ。同社創業者の長女で、2代目として代表取締役社長を務める池野谷ひろみは「自分が食べたいもの、家族に食べさせたいもの、ヘルシーなものだけを提供する」と言う。

写真中央は「ダブル餃子定食」の焼き餃子12個
撮影=石橋素幸
写真中央は「ダブル餃子定食」の焼き餃子12個