日本人のうち運動不足が原因で死に至る人は全体の16%という研究結果がある。たしかに日本人の1日あたりの平均歩数は90年代から1000歩も減っている。何が起きているのか。近畿大学の谷本道哉准教授が解説する——。

※本稿は、谷本道哉『学術的に「正しい」若い体のつくり方』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

リモコンを手にした怠惰な男はソファの上で寝転がってポテトチップスを食べている
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90年代より「1日1000歩」歩かなくなっている

「ちょっとは運動しないとなぁ」
「何か体を動かすことをしなきゃ」

多くの人がそう思っていることでしょう。運動が健康によいこと、またスタイルを改善して見た目も若々しくすることは誰もが認識している、いわば常識といえます。

運動不足は、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病などの生活習慣病を誘発します。また、高齢期の虚弱、体力低下による要介護の一要因にもなっています。私たち人間は「動物」。文字どおり、動いていないと病気になってしまうのです。しっかりと動いていてこそ、元気で健康な状態を保つことができるのです。

また、運動が見た目を若くしてくれることも経験的に明らかですよね。

中年以降になっても余分な脂肪のついた太鼓腹にならず、筋肉がしっかりついたカッコいいスタイルを維持している人は不思議なほど年をとりません。理由として、運動によるホルモン応答や抗酸化能力の向上などが関係していると考えられます。

健康にも若々しさのためにも運動がよい。分かっているはずなのに、残念ながら運動をしっかり行っている人というのは極めて少数派です。厚生労働省の調査によると、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続して行っている人は20〜50代では20%程度しかいません。

そして、日常の活動量の目安となる「歩数」は90年代と比べて1000歩ほども減っています(図表1)。運動をしていないというだけでなく、日常生活でもほとんど体を動かさなくなっているのです。

1997年と比べて、1000歩近く歩数が減っている
1997年と比べて、1000歩近く歩数が減っている(画像=『学術的に「正しい」若い体のつくり方』)