新型コロナが不動産バブルを抱える中国経済に直撃

新型コロナウイルスによる肺炎の発生は、不動産バブルを抱える中国経済に衝撃を与える可能性がある。リーマンショック後、中国政府は主に公共投資によって景気を人為的に支えた。その結果、中国経済は高成長を達成することができた。

政府が不動産価格の抑制策を導入しているものの、大都市で住宅価格が値上がりした。中国山東省仏山市の物件を内見する中国人たち(2018年12月24日)
写真=Imaginechina/時事通信フォト
政府が不動産価格の抑制策を導入しているものの、大都市で住宅価格が値上がりした。中国山東省仏山市の物件を内見する中国人たち(2018年12月24日)

中国経済が高成長を続ける中、カネ余りと景気先行きへの楽観や強気心理の連鎖から住宅などの不動産価格が高騰した。それが中国の不動産バブルを発生させた。バブル膨張とともに債務残高も増えている。そうした状況下、共産党内部の改革派幹部は、わが国のバブル崩壊後の景気低迷の教訓をもとに構造改革を行うことを考えた。

しかし米中の通商摩擦などから景気減速が鮮明となり、保守派を中心に改革への批判が増えた。習近平国家主席は批判に配慮せざるを得ず、経済政策を総動員して景気を支えようと必死だ。そこに、今回の新型肺炎が発生した。これは中国経済の不安定性を一段と高める要因だ。

かつて2002年から03年にかけて、SARS(重症急性呼吸器症候群)が発生した。当時、世界全体のGDP(国内総生産)に占める中国の割合は3.6%だった。その後の成長により、昨年、世界のGDPに占める中国のシェアは16.3%に達している。それだけ中国経済が世界に与える影響度合いは大きくなっている。

近年、中国経済は明らかに成長の限界に差し掛かっている。成長力が低下すると、資産価格にも下押し圧力がかかりやすい。新型肺炎は、中国経済のハードランディングのリスクを高め、世界経済全体を下押しすると考える必要がある。今回の新型肺炎はそれだけのインパクトを持ち得るファクターだ。