新型肺炎問題で寄港拒否が相次いだクルーズ船問題。この件で橋下徹氏が最も憤るのは、日本人5人が乗船していたオランダ船籍の船ウエステルダム号への日本政府の対応である。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(2月18日配信)から抜粋記事をお届けします。
カンボジア南部シアヌークビルで、クルーズ船「ウエステルダム」号から下船する乗客
写真=AFP/時事通信フォト
カンボジア南部シアヌークビルで、クルーズ船「ウエステルダム」号から下船する乗客。=2020年2月15日、カンボジアシアヌークビル

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日本は、いざというとき本気で自国民を守ろうとしないのか……

ダイヤモンド・プリンセス号への日本政府の対応や船の状況が連日報道されているが、さらに僕が気になったのは別のクルーズ船「ウエステルダム号」への対応と状況だ。ウエステルダム号は船内感染の疑いのため、太平洋の沿岸国5カ国から入港を拒否された。

8日に那覇港に寄港予定だったが、日本政府も6日に受け入れを拒否した。

そこでウエステルダム号は進路を変え太平洋をさまよいながら、最終的にカンボジアのシアヌークビル港に13日に寄港することができた。

実は、このウエステルダム号には、日本人5人が乗船していた。

僕はこの報道を聞いて、心底悲しくなった。やっぱり日本政府は、日本という国家は、いざというときに本気で自国民を守ろうとしないのか、と。

確かに最終的には、日本人乗客はシアヌークビルから日本に帰国した。しかしそれは結果オーライの話であって、はじめからカンボジアがウエステルダム号の入港を認めていたわけではない。どこにも寄港が決まっていない中で、日本政府は日本人が乗っているウエステルダム号を太平洋に放り出したのだ。

日本政府は横浜のダイヤモンド・プリンセス号の対応でいっぱいいっぱいになっていたのだろう。そこにさらなる感染疑いのある大型クルーズ船がやってきたら、もうお手上げだ。だからとにもかくにも日本の港に寄港させたくない、という日本政府の気持ちはわかる。

先にも述べたが、危機対応の鉄則は、自分が抱える危機の範囲を小さく狭くすることなので、ウエステルダム号を日本で抱えないという判断は適切だ。

しかし、乗客である日本人、自国民の保護は全く別の話だ。ここは日本政府、国家として絶対に譲ってはならない行動原理だ。