昨秋、大活躍したラグビー日本代表は31人中15人が外国人だった。日本は外国人を「お雇い」や「助っ人」という言葉で評しがちだが、今回のラグビーではそうした言葉は聞かれなかった。なにが違ったのか。亜細亜大学アジア研究所の大泉啓一郎教授は「そこに日本企業が進めるべきダイバーシティのヒントがある」と指摘する――。
写真=時事通信フォト
準々決勝・日本-南アフリカ。南アフリカ戦の後、記念撮影する日本代表の選手ら=2019年10月20日、東京スタジアム

多国籍「日本チーム」の活躍

2019年のラグビーワールドカップ日本大会に、日本中がテレビにくぎ付けになった。それは日本チームの快進撃により、不安で不透明な現在に「やれば、できるかもしれない」という勇気を与えてくれたからだと思う。選手たちには心から感謝したい。

とりわけ私の目に留まったのは、日本チームでの外国人の活躍だった。たとえばキャプテンであるリーチ・マイケル選手の人を思いやる発言(それも日本語で)は、日本人が忘れつつある何かを思い出させてくれた。それは、私だけではないのだろう。彼にボールが回る度にスタンドから「リーチー」という声援が飛んだのは、多くの人が彼の人間的魅力に反応したからに違いない。

今回の日本チームの外国人(日本国籍を取得した者を含め)は31人中15人であったという。ワールドカップでは、①出生地が日本である場合、②両親もしくは祖父母のうち1人が日本国籍である場合、そして③日本で継続3年以上居住する場合、④通算10年にわたり居住する場合、日本チームでプレーできる。日本チームの外国人の多くは③、④に該当する。

日本チームが多国籍で編成されたのは、今大会が初めてではない。前回のワールドカップの時点で、日本チームの11人は外国人だった。それが、南アフリカを倒す「金星」につながり、今回の決勝トーナメント進出の原動力になった。

多国籍で編成された日本チームを、まったく違和感を持つことなく観戦できたのは、きっと日本人ラガーと外国人ラガーがうまく溶け合っていたからだろう。ラグビーには「ワンチーム」、あるいは「ワンフォアオール、オールフォアワン」という考え方があるという。その言葉通り、多国籍のメンバーが一致団結していることに、私は魅了された。