嵐の五輪ソングで紐解く「大ヒットの法則」

2019年年末の「紅白歌合戦」で、米津玄師さん作詞作曲の『カイト』が披露された。歌ったのは、嵐の皆さん。

「NHK紅白歌合戦」で人気グループ嵐が『カイト』を披露した国立競技場。(Natsuki Sakai/AFLO=写真)

『カイト』は、「NHK2020ソング」であり、東京オリンピック、パラリンピックが行われる20年に、NHKの関連番組を通して何度も耳にするであろう楽曲である。

『カイト』を初めて耳にして、皆さんはどのような印象を持ったかと思って、ツイッターのアンケート機能を使って質問してみた。回答から、それぞれの人が、初めて聴いた印象をいろいろと探っていることが伝わってきた。

ある楽曲を初めて耳にするときに脳の中で起こっていることは極めて興味深い。何しろ今まで聴いたことがない作品だから、脳はなんとかしてそれを理解し、印象を定着させようとする。

その際に、脳の側頭連合野に蓄積された過去の音楽体験、楽曲の記憶が総動員される。似たようなメロディーが想起される一方で、楽曲の「新奇性」もまた、脳の中で注意の回路を活性化する。好ましい新奇性であると知覚されると、ドーパミンを中心とする脳の報酬系が活動することになる。

初めて接する刺激が脳にどのような影響を与えるかということは、つまりは「初速」の問題である。その立ち上がりが、ヒットするかどうかを左右する重要な因子となる。