東京などの大都市で空き家が増えている。主要駅から離れた物件が売れなくなっているためだが、問題はこれだけではない。不動産コンサルタントの長嶋修氏は「2022年以降は大量の農地が市場に解放され、住宅の建設ラッシュが起きる。国が“新築優遇”を改めない限り、空き家は増え続けるだろう」と警鐘を鳴らす——。
写真=時事通信フォト
二子玉川駅周辺と多摩川より富士山(東京都世田谷区)

なぜ人口が多い大都市に空き家が多いのか

大都市に空き家が増えている。総務省によれば、全国で最も空き家が多い自治体は東京都世田谷区で4万9070戸。2位は東京都大田区(4万8080戸)、6位に東京都足立区(3万9530戸)と、上位に東京23区のマンモス都市が並ぶ。(住宅・土地統計調査・2018年)

「空き家問題」といえば人口減少や少子化・高齢化著しい地方などをイメージするが、いまだ人口増加を続けている大都市に多数の空き家が発生しているのはいったいなぜなのか。

ヒントは「利便性」だ。

都市部に空き家が増える理由の一つは「共働き世帯の増加」。夫婦2人世帯のDINKs(ダブルインカム・ノーキッズ)はもちろん、子供がいる世帯でも、保育施設に預けるなどして共働きを続ける傾向が顕著なのだ。1990年代には専業主婦世帯と共働き世帯の比率は拮抗きっこうしていたが、いまや共働き世帯が圧倒的多数を占める。

これには、給与所得者の実質所得が年々下がり、共働きでないと生活が苦しいといった事情や、企業も勤務時間など働き方に柔軟性を持たせ共働きしやすい環境を整備しつつあるということもあるだろう。

専業主婦世帯と共働き世帯(1980~2018年)