万が一、夫が死亡しても、団体信用生命保険で住宅ローンは完済できる。しかし、病気で倒れて収入が減った場合はどうする……。

ネット銀+収入保障で住宅ローンを36万円節約するコツ

昔はマイホームを買って5~6年もすればそれなりに価値が上がり、買い替えをすることができた。しかし、今は買った瞬間に不良資産化し、売却してもローンが完済できないから、相当慎重にマイホーム計画を立てなければならない。

「主人が亡くなったら、住宅ローンが保険でチャラになるからいいけど、病気で働けなくなったら困るのよね」。これが妻たちの本音だろう。とくに最近はストレスで体調を崩すケースも多くなっている。上司と部下から板挟みになって、苦労が重なるのは40代のつらいところだ。

ストレス解消や健康管理に十分気をつけて体を守るのが第一。しかし、病気で働けなくなったとしても困らないような備えをしておくことも重要だ。

会社員の場合、働けなくなって収入が途絶えると、最長1年6カ月は傷病手当金という公的保障がある。日常の生活費はこれで賄うとしても、住宅ローンをどうするか、考えておかなければならない。

最近は病気になったときの保障が付いた住宅ローンが一般的になってきた。たとえば三井住友銀行の三大疾病保障付き住宅ローン「三大疾病ワイド保障型+5」は、ガン、急性心筋梗塞、脳卒中の三大疾病で特定の状態と診断されたときに加え、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎の5つの重度慢性疾患で働けない状態になったときに住宅ローンの残高がゼロになる保障が付いている。ただし、働けない状態は13カ月以上続かなければ対象とならない。その間は前述の公的保障や貯蓄で乗り切らなければならない。

問題は、保障が付いている分、住宅ローンの金利が高くなることだ。この種の疾病保障付き住宅ローンの場合、金利が0.3%程度上乗せされるのが一般的。三井住友銀行のケースで3000万円を30年返済で借りると、通常よりも毎月5070円の負担増になる。トータルで182万5200円の出費だ。通常の保険で同等の保障を準備するより安いが、住宅ローン自体の金利が安いかどうかが問題になる。

というのも最近は、ネット専業銀行でも住宅ローンを扱っていて、破格の金利を提示しているケースがある。であれば、金利の安い銀行で住宅ローンを借りて、保障は別途保険に加入するという選択肢もありうる。たとえば、図のように住信SBIネット銀行で住宅ローンを借りて、ソニー生命の三大疾病収入保障保険に加入するというプランが考えられる。

主人の病気リスクをヘッジして、返済負担も減らす2.85%固定金利のマジック
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主人の病気リスクをヘッジして、返済負担も減らす2.85%固定金利のマジック

住信SBIネット銀行の7月適用の金利は2.85%。その返済は月額約12万円になるので、その返済が困らないように保険で用意すると、保険料は月額約1万4550円となる。両者の総支払額を計算すると、自分で住宅ローンと保険を組み合わせたほうが約36万円安くなる。ただし、保障内容にも差があるし、金利の変動で必ずしもこうなるわけではないので要注意だ。

金額の多寡はあったとしても、いずれも保険料というコストが必要になる。そこで保険に加入するよりも有利で手っ取り早い方法がある。もし、住宅ローンが払えなくなったときに実家が頼れるかどうか、人に貸して返済が可能か、などをきちんとシミュレーションしておくことだ。いざというときには、実家に身を寄せ、マイホームを賃貸に出すことが可能であれば、高額の保険料を支払う必要はなくなる。

病気になるリスクは無視できないが、病気で働けなくなる確率はそれほど高くない。そのために安くない保険料を支払うより、家族と助け合う関係ができていれば、余ったお金で老後資金を積み立てることもできるし、ときには家族で旅行にも行ける。よほど有効なお金の使い方ではないか。

ここで注意しなければいけないのは共働き家庭の場合だ。住宅ローンを借りている人はほとんどの場合、団体信用生命保険に加入している。しかし、「加入しているのは夫だけ」というのが大半。もし、妻の収入である程度の住宅ローンの返済をしているなら、妻に万が一のことがあった場合、働けなくなった場合のリスクも考えておかなければならない。妻の収入が途絶えても住宅ローンの返済に支障がなければOKだが、もし支障があるとすれば、妻の保障も用意しておくべきだ。

(構成=向山 勇)