クリエーティビティ重視社会の到来と6つの感性の磨き方を提唱、話題を呼んだ『ハイ・コンセプト』から5年。今回の作品のテーマは「やる気!」だ。個人が生き残るための心構えをアドバイスする。
ダニエル・ピンク Daniel H. Pink


1964年生まれ。エール大学ロースクールで法学博士号取得。世界各国の組織を対象に講義を行うかたわら、「 ワシントン・ポスト」などに寄稿。クリントン政権下ではゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた。
ピンク氏は人間の行動タイプを「タイプX」(外的な報酬をエネルギー源とする)と「タイプI」(創造したい、新しいことを学びたいといった内発的な欲求を源にする)に分けて論じている。
ビジネスパーソンには2つのタイプがいる?

ビジネスパーソンには2つのタイプがいる?

「タイプI」の行動を助けるのが「モチベーション3・0」であり、その拠り所となるのが「自律性」「マスタリー」「目的」の3つの要素である。

自分の意思で行動を決め、意義あることの熟達を目指し、大きな目的を追求する――一見、青臭い理想主義にも思えるが、科学的に見て、こうした行動は人間の根源的な欲求に適ったものらしい。

しかし、日本のビジネスパーソンを見渡せば、信賞必罰によって受動的に動く「タイプX」がまだまだ幅を利かせている。そんななか、いち早く「タイプI」に目覚めた人には厳しい環境だが、彼らが自分を見失うことなく、働く喜びを実感できる方法もあるという。

日本だけではありません。アメリカの職場でも、まだ従順な「タイプX」が大半を占めています。私たちは周りの人々に影響されて行動するので、少数派の「タイプI」がモチベーションを保つのは確かに困難です。

周囲に流れされないためには、どんな小さいことでもいいから、何かをはじめることが重要です。今日から実践できる試みをいくつかあげてみましょう。

同僚と実験的なことをはじめる

まず考えられるのは、気の合う同僚と、自律的な仕事のやり方を試してみることです。仕事の内容や進め方を、一部分でも、自分で決められるよう工夫してください。上司の理解が得られないなら、週末に「フェデックス・デー」と呼ばれる取り組みをやってみるのもいい。

これはオーストラリアのコンピューターソフト開発会社が考案した制度で、24時間かけて、通常業務とは関係のない好きな課題に取り組み、その成果を発表するというもの(24時間で荷物を届ける「フェデックス」にちなんで命名された)。この制度から新製品のアイデアがいくつも生まれたそうです。自発的に動くことで、思いもかけなかった力が出ることを実感できるでしょう。