米中は衝突を回避できるのか。米国で長く国防長官諮問委員を務めた政治学者・グレアム・アリソン氏は、産官学の各界が連携する「日本アカデメイア」主催のシンポジウム「東京会議」出席のために来日した。「トゥキディデスの罠」という言葉の考案者としても知られるアリソン氏は、過去の歴史を例に取りながら、2つの超大国の近未来を予測した――。(第4回/全5回)
写真=AFP/時事通信フォト
トランプ米大統領(右)と中国の習近平国家主席(米フロリダ州パームビーチ)=2017年4月6日

イデオロギー対立は、冷戦終結をもって終わったはずだった

――アリソン氏は安全保障のスペシャリストで、特に中国問題に精通している。著書『米中戦争前夜』は日本でも話題になった。そのアリソン氏は、30年前の冷戦終結時に予測した未来と現状のずれを指摘する。

冷戦の終結が宣言されてからちょうど30年です。当時、心あるほとんどのアメリカ人や日本人は、冷戦の終焉を迎えて、歓喜しました。有史以来、人類は何千年にもわたってイデオロギー的な戦いを繰り返し、それによって人間の行動が支配されてきましたが、そのようなイデオロギー的対立は終わったということです。

民主主義と市場経済、諸国間の平和的な関係が恒久的なものになると思ったのです。私たちはもうイデオロギー対立とは関係なくなり、今後はいかにして社会を統治していくかを考えればいいということです。

あちこちの国にマクドナルドがあって、それぞれの国民は(同じ)ハンバーガーを食べるのに、お互いに戦うというのは非常に奇妙だ。30年前、冷戦が終わった時、多くの人はそう思った。今では信じられないことですが……。これは我々が現在、いかに混沌とした社会に生きているかを思い出すには良い材料だと思います。