1日中パソコンに向かって仕事をしている人が多くなり、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)で悩む人が増えている。下肢静脈瘤は、その名称通り、足のふくらはぎなどの血管がモコモコと盛り上がる疾患で、特に女性は、その見た目を大いに気にしてしまう。

実際には、「見た目が悪い」だけではなく、「脚が痛い」「だるい」「脚が重い」「疲れやすい」「脚がむくむ」「脚がつる」といった症状がある。

このような症状を引き起こす下肢静脈瘤は、脚の静脈に逆流が起こり、そのために、下肢静脈に瘤状の拡張、変形ができる疾患である。

なぜ、静脈血の逆流が起こるのか――。

静脈は血圧がほとんどない。頭、顔、上肢などの静脈血は重力の法則で心臓に戻るが、胴、下肢は重力に逆らう形になる。実は、静脈ならではの特徴が2つある。1つは逆流を防ぐ弁。もう1つは、脚の筋肉の収縮力である。

筋肉の収縮力を借りているのが深部静脈で、弁の力を借りているのが表在静脈である。この表在静脈には大伏在静脈と小伏在静脈がある。

下肢静脈瘤は重症度の順に以下の4種に分類される。

(1)クモの巣型 直径1ミリ以下で毛髪のような静脈の拡張。小さなクモの巣のようになっている。
 (2)網目型 直径1~2ミリ程度で、糸のように静脈が拡張している。
 (3)側枝型 (4)の伏在型から分かれている静脈で、直径5ミリ程度の拡張。
 (4)伏在型 大伏在静脈、小伏在静脈の拡張。直径は8ミリ以上にも達する。

血管がモコモコ盛り上がるなど見た目に症状が強く出るのは(4)の伏在型。放っておいたからといって脚が腐ることはないが、脚が重くなったり、QOL(生活の質)が悪化するので治療が勧められる。治療は、軽度であれば日帰り手術。中等度以上でもわずかに1泊2日だ。

軽度の(1)(2)に対しては、静脈瘤硬化療法が行われている。拡張した静脈に硬化剤を注射で入れ、二次的に炎症を起こして静脈を閉そくさせる。時間は10分程度で終了する。

中等症の(3)、重症の(4)については、脚の付け根からひざまではストリッピング術。それも周囲のダメージが少ない「内翻式」で施術する。補助的な静脈なので抜去しても問題はない。静脈の抜き方は靴下を脱ぐようにクルクルと丸めるようなやり方をする。そして、ひざから下は硬化療法で対応する。

治療を受けるクリニックや病院を選択する場合は、やはり数多く治療を行うとともに、より体にやさしい方法を実践しているところを選択すべきである。

【生活習慣のワンポイント】

下肢静脈瘤患者の男女比は1対4で女性に多く、年齢的には40歳以上。「立ち仕事」「座り仕事」「出産時」「長時間の激しい運動」「遺伝的要素」など、幅広い原因があげられている。

(1)座り仕事は40分に10分は「休む」!
 この場合の休むとは、近くを歩いたり、ストレッチで筋肉を伸ばすこと。

(2)1日20分はしっかりウオーキング!
 立ち仕事の人も、リズミカルに歩いていないので、少し早足になるぐらいのウオーキングを楽しむとよい。

(3)脚、そして全身のケアを!
 特に、長時間の激しい運動をしたあとは、全身のマッサージを受け、しっかりケアするのが重要である。

(4)眠るときは脚を少し高くする
 ひざから足先に座布団などを敷いて、脚を高くして眠ると、脚のむくみもとれる。

(5)ぬるめのお湯で半身浴!

(6)青背の魚をしっかり食べる!
 サンマ・カツオ・イワシ・アジ・マグロなどの青背の魚は、DHAやEPAが豊富に含まれているので血液がさらさらになり、血液循環がよくなる。