研究開発費は抑えて、商品化のスピードを2倍にし、売り上げは毎年4000億円以上伸ばしていく。世界のマーケティング・カンパニーP&Gは、こんな夢のようなことをやってのけた。果たしてどんな方法で実現したのだろうか。

P&Gには臭い嗅ぎのプロがいる

日本人の「香り」に対する意識は昨今、大きく変化してきている。香りを「愉しむ」人々が増えているというのだ。これまで日本では、体であれ、家であれ、無臭ということが重んじられ、臭いのよし悪しにかかわらず余計な香りのついていないことが好ましいとされてきた。

P&Gイノベーション合同会社マーケティング本部マーケティングディレクターの伊藤正明氏によると、P&Gには、世界中の人々の臭いを測定する臭い嗅ぎのプロがいるのだそうだ。その人たちの判定によると、日本人の発散する臭いは、世界で最も低い水準だったという。これはもちろん体質的な理由があるのだろうが、それ以外に、フレグランスやオーデコロンなどで臭いを付けることに抵抗感を抱く人々が多かったことの結果と受け取ることもできる。

また日本人の臭いの意識に関して諸外国との比較で顕著な相違があるのが、「フレッシュ(エア)」という言葉だ。伊藤氏自身、世界の多数の家庭を訪問し、インタビューした結果によると、外国人にとっては、何らかの香りを感じることが「フレッシュ」な状態だという。実際、洗濯後のタオルの臭いを嗅いだときに、何の香りもしないと「このタオルはフレッシュじゃない」と言われるそうだ。どんなに真っ白になっていようと、どんなにやわらかく仕上がっていようと香りを発しないものはフレッシュではないというのである。臭いの意識について異文化性を強く感じる話といえる。

ところが最近では、香りを愉しむ日本人が増えている。消臭芳香剤はもとより、洗濯用洗剤や柔軟剤においてすら、香りのいいものが求められ、それを訴求ポイントにする製品が増えてきている。外国流の「フレッシュ(エア)」を求める層が拡大しているのだ。

驚くべきことに、伊藤氏によると、置き型用の消臭芳香剤は、日本が世界でダントツのマーケットになっているという(ちなみに、消臭芳香剤市場全体で見ると、日本は世界で二番目なのだそうだ)。