パワースポットと言われる場所は全国各地にあるが、どんな場所なのだろうか。ノンフィクション作家の髙橋秀実氏は「旅行も『パワースポットに行く』となればお得感が高まる。『とりあえずパワースポットに行く』という人たちは、日本文化の伝統に連なっている」という――。

※本稿は、髙橋秀実『パワースポットはここですね』(新潮社)の一部を再編集したものです。

写真=時事通信フォト
榛名神社の随神門=2015年11月、群馬県高崎市

癒やされ、リラックスでき、穏やかになり、幸せに…

「パワースポット」について話していると、近くにいた人も「僕もそこ行きましたよ」と割り込んできたりする。口ぶりにパワーがある。話しているだけでパワーが波及していくようなのである。

「パワーがもらえるんです」

50代女性も力強く言い切った。

——もらえるんですか?

「もらえる」

何やらタダで「もらえる」お得情報のようなのだ。

——パワーを、ですか?

「そう。だってパワースポットですから」

パワーがもらえるから「パワースポット」ではなく、「パワースポット」だからパワーをもらえるらしい。一種の言霊か、と私は思った。

そこで巷のガイドブックを読んでみると、「パワースポット」とは「心と身体と魂が何らかの変化やメリットを受けることができる場所」(若月佑輝郎著『日本全国このパワースポットがすごい!』PHP文庫 2010年)などと定義されている。

どんな変化やメリットをもたらすのかと他の本も見てみると、「もやもやした心の迷いを、晴らしてくれるような場所。やさしく包みこんでくれる、心地よい空間」(『全国パワースポット完全ガイド』枻出版社 2010年)、あるいは「そのような場所にいると、癒され、リラックスでき、穏やかになり、幸せを感じていきます」(『日本のパワースポット案内』笠倉出版社 2010年)……。

何やらエステティックサロンの広告のようで、具体的にどこがパワースポットなのかとページをめくると有名な神社ばかり。これでは実質的に神社巡りと同じではないか。