日本から世界に向けて発信されたサービスイノベーションのモデルとして、ハーバードをはじめ欧米のビジネススクールで取り上げられるのがセブン-イレブンだ。創業以来、既存の概念を打ち破って、新しいことに挑戦し続け、世界初、日本初を連発し、世界最大の店舗数を展開してきた。その舵取りを担ったのが創業者である鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問である。第一線を退いたいまなお、流通業の未来を考え続ける鈴木顧問に話を聞いた。(第2回/全3回)
写真提供=セブン&アイ・ホールディングス
1974年東京は江東区豊洲にセブン-イレブン1号店が開店した。初日の様子。
写真提供=セブン&アイ・ホールディングス
サウスランド社がアメリカでチェーン展開していたセブン‐イレブンとの提携から、コンビニ事業は始まった。

モノマネをする経営としない経営

——最近の日本の企業経営を見て、どのような印象をお持ちでしょうか。

【鈴木】今はコンサルタント全盛時代です。ところが、コンサルタントの実態はといえば、実務の現実をよくわかっていない人たちが実務についてアドバイスしているケースがよく見られます。アドバイスは、たいてい他社で成功している事例を持ってきて適用させようとするものです。そのアドバイスや提案にしたがっても、モノマネにすぎませんから、結局、二番手、三番手以上にはなれない。危惧されるのは、多くの経営者がそれに依存している傾向が見られることです。

モノマネをする経営としない経営、どちらがいいか。モノマネをするほうが楽なように思えますが、モノマネは進む道が制約され、差別化できないまま、やがて過当競争に巻き込まれるだけです。今の日本は柳の下にドジョウが1匹いるかいないかの時代です。どこにドジョウがいるか自分で探して、自己差別化をしていかなければなりません。

——なぜ、今の経営者はコンサルタントに頼りがちなのでしょうか。

【鈴木】経営手法に自信がなくて、考える力が失われつつあるのでしょう。

——経営者に何より必要なのは、自分で考える力であるとお考えでしょうか。

【鈴木】それは経営者に限らず、社員一人ひとりが自分で考え、実行していかければなりません。たとえば、セブン-イレブンの1店舗あたりの平均日販は65万6000円(2018年度)で他チェーンと12万円以上も開きがあります。同じコンビニエンスストアの業界なのに、この差が出るのは、セブン-イレブンでは創業以来、すべて自分たちで考え、実行してきたからです。

セブン-イレブンはアメリカが発祥です。1970年代の初め、スーパーが新規出店するたびに地元商店街で反対運動が起きるようになっていました。そこで、小型店でも大型店との共存共栄が可能なことを示せるはずだと考えて、日本に導入したのが始まりです。

ところが、アメリカでチェーン展開をしていたサウスランドと難交渉の末、契約が結ばれ、開示された経営マニュアルには、期待していた経営ノウハウはどこにも書いてなく、日本では通用しないものばかりでした。自分たちですべてをゼロからつくり上げるしかない。モノも金もなければ、何の経験もない。だから、知恵を出さざるをえませんでした。

▼PRESIDENT経営者カレッジ 開講記念セミナーのお知らせ

鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問がPRESIDENT経営者カレッジ開講記念セミナーに登壇。さらには、「これからの時代に成功する経営者の条件」をテーマにオリックスシニア・チェアマンの宮内義彦さんと対談します。
テーマ:「顧客本位を貫く覚悟」
開催日:1月20日 10:30~19:30

会場:一橋講堂

対象:経営者、経営の後継者、次期経営スタッフ
参加費:講演のみ ¥5,000

講演&昼食 ¥6,000

講演&懇親会 ¥10,000

講演&昼食&懇親会 ¥11,000

▼詳細、お申込はこちら