服の製造には無駄が多い。裁断時の切り捨てでは大量の原料が捨てられ、トレンドに遅れた商品は廃棄される。和歌山県の島精機製作所は、そうした無駄を劇的に減らす機械を作った。『アパレルに革命を起こした男』(日経BP社)の著者・梶山寿子氏が、異能のメーカー・島精機の秘密を解説する——。
島精機製作所の工場。1本の糸から服を編み上げるホールガーメント横編機を製造。(画像=『アパレルに革命を起こした男』)

今までのアパレル産業は「無駄ばっかり」

環境保全など、社会的な課題に関心の高い企業やブランドを積極的に選ぶ「エシカル消費」の拡大とともに、欧米の高級ブランドも、サステナビリティ(持続可能性)を意識した商品を展開している。

ところが、旧来のアパレル産業のビジネスは、企画、製造、流通の各プロセスにおいて、相当な資源の無駄遣いをしているという。

「ニットでも織物でも、生地を型紙に合わせて裁断するから、裁ちクズが出るんです。製品にする過程で、セーターのようなもので約30%、デザインの凝ったワンピースやドレスなら約50%の原料が無駄になる。今までのアパレル産業は無駄ばっかりなんです」

アパレル業界の裏方を支える世界有数の編機メーカー、島精機製作所(本社・和歌山市)の創業者、島正博会長は、そう語気を強める。

「もったいないだけやない。そういうカットロス(裁断時に出る無駄)を廃棄して燃やしたら二酸化炭素も出る。二酸化炭素などの温室効果ガスは、地球温暖化の原因になりますが、アパレル産業が出す二酸化炭素は、地球全体が排出する量のおよそ10%を占めると言われているんです」

「衣食住」と言われるように、衣服は人間にとって欠かせないもの。それだけに、社会全体に与える影響も無視できない。日本が誇る発明家でもある島さんは、数十年前にこの問題に気づき、改善策を模索してきた。

島さんの挑戦をまとめた書籍『アパレルに革命を起こした男』(梶山寿子著、日経BP)から、その一部を抜粋、再構成して紹介する。