今春卒の大学生の内定率は、過去最悪の80.0%。就職氷河期が常態化したともいえる現在、理想の「働き方」とは――。雇用問題のスペシャリストと気鋭のノンフィクション作家が語った。

リクルートエージェント エージェントフェロー●海老原嗣生

1964年生まれ。メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。2008年、HRコンサルティング会社ニッチモ設立。漫画『エンゼルバンク』主人公のモデルでもある。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』など。

 

ノンフィクション作家●稲泉連

1979年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2005年に上梓した『ぼくもいくさに征くのだけれど』で、第36回大宅壮一ノンフィクション賞を史上最年少で受賞。他の著書に『僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由』などがある。

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――バブル崩壊以降の就職氷河期に悩む世代を、朝日新聞は「ロストジェネレーション」(以降、ロスジェネ)と名付けました。この世代についてのご見解をお聞かせください。

海老原 僕が20代半ばのころ、バブル崩壊後の時代の話です。取材で訪れた小さな商社の人事部長が話してくれました。「実は俺、早稲田の政経卒なんだよ。オイルショック直後に社会人となって、まともな就職口なんてなかったんだ。そのころテレビでは、中村雅俊扮する『カースケ』が何でも屋を開く、『俺たちの旅』が流行ってた。元祖フリーター世代だね。俺の直後の1980年代前半の長期不況期もそうだし、85年の円高不況のときもけっこういた。そう、今にまた、俺みたいな学生があふれるよ、巷には」と。

その予言通り、92~95年、99~2000年、02~03年社会人組は、みな、苦しい就活を強いられた。つまり、就職氷河期は景気変動により繰り返し起きているという事実があります。

一方、若者はいつの時代も特有の悩みに直面する。「仕事の意義がわからない」「損をしている」と。若者特有の悩みと景気循環の谷が重なり、そこにマスコミの過剰反応が加わり、「ロスジェネだけが損をする」という誤解が生じてしまったのではないか、というのが僕の見方です。