成長するため自分を追い込む

気がつけばフリーになってから1年半がたちました。なんだか不思議な感じがします。というのも、私は若いころからずっと、「自分はたとえ定年を迎えても、いられる限りはNHKにいるんじゃないか」と、当たり前のように考えていたからです。

フリーアナウンサー 有働由美子氏

NHKで働くのはとても快適でした。とりわけある程度のキャリアを重ねてからは、自分の意見は通りやすくなるし、周囲は気心の知れたスタッフばかりになるし、とても居心地がよかったというのが本音です。辞める理由なんて見つかりませんでした。

ただ、40代も半ばを過ぎると、組織の中でこの先自分がどうなるのかがある程度見えてくるのも事実です。そのころから常に心に引っかかっていることがありました。

《遠からず、現場を離れて管理職になる日が来る》

それが組織人の宿命だと頭ではわかっていても、いざ内示が出たときに、まだアナウンサーとしてやりたいことが残っていたら……。「仕方がない」とおとなしく受け入れられるほど、私は欲を捨てきれていませんでした。

だとしたら、自分は現場でアナウンサーを続けたいと訴えるのか。

もしかすると、そういう希望も口にしてみれば通ったかもしれません。でも、そのせいで後輩たちが活躍の場を得られず、割を食うような形になったらどうしよう。ベテランの私が若い世代の芽を摘むようなことをしていいのだろうか……。