イタリア屈指の観光都市・ヴェニスには、毎年、世界中のセレブが集まるという。『アート思考』(プレジデント社)の著者で東京藝大美術館長の秋元雄史氏は「ヴェニスには街の至る所に無形の価値がある。日本人はこのイタリア人のプロデュース力を見習うべきだ」という――。(第4回/全5回)

※本稿は、秋元雄史『アート思考』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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なぜ、直島に海外セレブが集まるのか

直島時代に、私はイタリアのヴェネチア・ビエンナーレを毎回訪れました。ベネッセ賞という若手への賞の授与と直島の宣伝のためです。

なぜこんなプレビューのタイミングで賞の授与と直島の宣伝を行ったのか。それは直島のことを知ってもらい、話題にしてもらうためには、世界のアートを牽引するトップのアート関係者が集うこのタイミングが、最も効果が高いからです。いってみればこのタイミングで集まるのは、皆、内輪の業界人ですが、その影響力たるや凄まじいものがあります。

著名なアーティスト、美術館長、キュレーター、美術評論家、美術ジャーナリストといったアートセレブが世界中から集まり、会場を盛り上げるのです。最もホットなこのタイミングで直島のことを知ってもらうのが、一番効果的な宣伝方法でしょう。

直島への来島者は、7割が海外の人、3割が日本人といわれています。それも海外から訪れる人々は、いわゆるセレブといわれるリッチな人々、大学教授や研究者などのアカデミシャンらです。なぜそれほど海外で知られているか、それも世間に影響力のある美術関係者や美術愛好家に知られているかといえば、私たちがヴェニスの場で毎回プロモーションを行ってきた結果もあるのです。