3月11日以来、東北各県の自治体職員は非常時の名の下、不眠不休の活動が求められてきた。サラリーマン的な目で見れば、つい「日頃守られているのだから、こんなときこそ働くのは当然」との声もあるだろうが、なかには恐ろしいまでのサービス残業を強制されてきた職員もいる。

例えば某町のある職員は上からの命令で身を粉にして働いた結果、1ヵ月の時間外労働が300時間を超え、震災から4ヵ月が経った段階で合計1000時間を超えていた。1日平均10時間以上、寝ている時間以外は働き続けている状態だ。これが常軌を逸した労働時間なのは言うまでもないが、さらに驚くのは、すべてサービス残業として処理されていたことだ。

とかく厳しい目が向けられる公務員とはいえ、一切の手当を出さないのはあまりにもヒドイ話である。当然、この職員は上司にその不満を訴えているのだが、緊急時だから、みんなそうだから仕方ないと無視されている始末。果たしてこれで許されるのだろうか?

「いいわけありません。完全なる労働基準法違反ですよ。そもそも、地方公務員といえども労働基準法の適用があるわけですし、働いた分の対価を支払ってもらうのは当然の権利です」

と解説するのは東京東部法律事務所の後藤寛氏だ。

後藤弁護士によると一般職の国家公務員なら労働基準法の適用から外れるが、地方公務員は民間企業並みに労働基準法が適用されるのが原則。なので、災害等により臨時に必要がある場合といえども、その対価を支払うことも当然のこと。

したがって、この職員は1000時間にもおよぶ時間外労働の対価を勤務先の自治体に請求するのは当然の権利であり、その額を単純計算すると時給1500円としても150万円に相当する。非常時を理由にしてもあまりに度を越しているうえ、人権問題も絡むので訴訟を起こせば勝つことはほぼ間違いないと思われる。