納得して入居を決めた老人ホームであっても、暮らし始めれば何かしら不満が出てくるものだ。多くの入居者は、スタッフとのなじみの関係が深まっていくことや他の入居者と仲良しになることで物足りなさを上回る住環境を得ている。しかし、そうならない場合、高額な入居費用を支払ったのに退去を余儀なくされるケースも起こっている。

入居者へのサポートを行っている上岡榮信氏は、「現実的に施設の状況を観察し、より具体的、実践的な選択を行う必要があります」と指摘している。

上岡氏が整理してくれた老人ホーム選びのポイントでは、まず、入居時にかかる一時金と入居後(月々の暮らし)にかかる費用をきっちりと把握することから始まる。片山ます江氏も「数字の把握は暮らしのあり方を考えるうえで大切なシミュレーションです。費用をかけすぎて最終的に生活保護になる人もいますから弁護士や税理士にアドバイスしてもらうべきです」と語っている。

上岡氏は同時に、施設の運営能力にも注意を払い、建物のある環境、設備内容、組織の人員配置、職員の経験年数などを確認することを勧めている。この点に関しては、「施設の状況把握をきっちりと行うと、収益の実態から事業者の運営能力が明らかになりますね。さらに、入居金が安い施設だから悪い施設であるといった考え方にもならないはずです。老人ホームの実態把握は重要です」と依田平氏も同様のアドバイスをくれた。

さらに、上岡氏はスタッフの採用条件として経験、資格、人柄などの項目のどこを優先しているかも判断基準のひとつになるという。

「スタッフの専門能力は当然必要ですが、心のこもったサービスを受けたいものです。そのあたりに関する施設側のバランス感覚をつかみたいですね。ただ、認知症介護の専門家など絶対に必要な専門職の有無、昼間・夜間の配置人数も確認しましょう」。このアドバイスに関しては、依田氏、片山氏のいずれも注意点として挙げている項目である。