教育熱心な親のもとで、元気をなくす子供たちがいる。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「大量の課題や細かい管理で子供を精神的に追い詰めていたら、それは“教育虐待”といえる。親も子も自覚しにくいのが怖いところだ」と指摘する――。
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30分でも「ぼーっとしている」のが許せない

近頃、「教育虐待」という言葉が世に浸透しはじめている。

虐待というと、子どもに暴力を振るったり、暴言を吐いたり、育児放棄をしたりといったいわゆる“ダメ親”を思い起こす人が多いだろう。その対極のように見える教育熱心な親は、一見子供思いの“いい親”に思われがちだが、子どもを精神的に追い詰めるという点では、前者と変わりない。むしろ、やっている方もやられている方も自覚しにくいという怖さがある。

カズマくんの家を訪れた時のことだ。カズマくんは中学受験を目指す5年生。両親は共に高学歴で教育熱心。受験塾には1年生から通わせている。

カズマくんのお母さんは、とにかく勉強をやらせたがる。カズマくんが勉強していない時間が一瞬たりとも許せないようで、次々と課題を渡す。例えば2時間勉強をしたら、30分の休憩が必要だ。この30分が子供にとってはリラックスできる時間で、そのメリハリが効果を上げる。そう、アドバイスをしても、お母さんは聞く耳を持たない。その30分すら休ませたくないのだ。

「ぼーっとしたり、遊んでいる暇があったら、勉強をしなさい! 成績が上がらないのは、努力が足りないからよ!」

休むくらいなら、この30分に勉強をして、クラスを2つ上げてほしい……。たくさん勉強をすれば成績が上がると信じているのだ。