日米貿易協定はトランプに利用された

2019年9月に行われた安倍晋三首相とトランプ大統領の首脳会談で発表された最終合意の共同声明を経て、19年10月7日、日米両政府は新たな貿易協定に署名した。早速、日本政府は日米貿易協定の承認案を臨時国会に提出、国会承認が得られれば2020年1月1日に発効する見通しだ。

トランプ流ディール外交に日本も中国も振り回されている。(AFP/時事通信フォト=写真)

日米貿易協定は日米間の農産品や工業品の自由貿易に関する取り決めで、関税の撤廃や削減について話し合いを行ってきた。今回の協定で決まった関税の最終的な撤廃率は貿易額ベースで日本側は約84%、アメリカ側は約92%。日本からアメリカへの輸出に関しては、楽器、自転車、エアコン部品、燃料電池など幅広い工業品の関税が撤廃・削減されるほか、日本産牛肉の輸入枠が拡大する。一方、アメリカから日本へ輸出される農産品の関税については、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の水準まで段階的に引き下げられる。

トランプ大統領との首脳会談で日米貿易協定の最終合意確認書にサインした安倍首相は「日米双方にとってウィンウィンとなる結論を得ることができた」と胸を張った。しかし、言うほど日本にとって「ウィン」と評価できる内容とは思えない。